日本の生物多様性の変化を評価する手法の開発

日本の生物多様性の変化を評価する手法の開発

タイトル日本の生物多様性の変化を評価する手法の開発
要約日本の森林性の生物について新たに開発した指数を用い、日本の森林は過去数十年間に急激な種数の減少はなかったものの、生物多様性は変化していることを明らかにしました。
担当機関(独)森林総合研究所 森林昆虫研究領域
(独)森林総合研究所 森林動物研究領域
(独)森林総合研究所 森林管理研究領域
(独)森林総合研究所 四国支所
(独)森林総合研究所 北海道支所
(独)森林総合研究所 森林植生研究領域
(独)森林総合研究所 国際連携拠点
(独)森林総合研究所 関西支所
(独)森林総合研究所 企画部
区分(部会名)森林
背景・ねらい2010年10月に名古屋で第10回生物多様性条約締約国会議(通称CBD/COP10)*が開催されました。この会議では「2010年までに生物多様性の急激な減少速度を低下させる」という2010年目標を達成できたかどうかの評価や、評価に基づいた新たな目標が決定されました。本研究ではわが国の目標達成の評価のために、日本の森林における生物多様性の変化を示す指数を開発しました。この指数を使うことで、これまで日本では森林性生物の種数の大きな減少はなかったものの、生物の分布など多様性は変化していることがわかりました。

*生物多様性条約締約国会議
1993年に発効した生物多様性条約を締約した国々が2年に1回開催する会議(通称CBD/COP)。CBD/COP10は日本が議長国となり、2010年に名古屋市で開催された。
成果の内容・特徴

森林の変化と種の減少

1960年代以降、日本の国土に占める森林の割合は約67%前後と安定していますが、人工林率は25%から42%へと上昇しました。また1970年代以降は森林の伐採が減少して、森林のバイオマスは増加してきています。こうした森林の変化に伴って、日本の森林の生物種は激減したのでしょうか。環境省のレッドデータブックを基に、様々な森林性生物の絶滅種や絶滅危惧種を調べてみました(図1)。その結果1991年までに樹木やほ乳類などで少数の種が絶滅していることがわかりました。しかし急激な種数の減少は見られませんでした。

鳥および大型・中型ほ乳類の多様性の評価

世界的には1970年代以降の生物多様性の変化が、リビングプラネットインデックス*という指数によって計算され評価されています(http://www.cbd.int/gbo2/)。そこで日本でも生物多様性の長期的変化を評価するために、長期的な生物の観測データの探索を行いましたが、残念ながら40年以上にわたり全国を網羅する解析可能なデータはありませんでした。
鳥や大型・中型ほ乳類については、環境省が1970年代と1990年代に全国的な分布調査を行っています。そこでこれらのデータを基に、日本のリビングプラネットインデックスを作成し、分布の変化を評価しました。その結果、約20年間に鳥では藪のような林を好む種の分布が減少していることがわかりました(図2)。森林の伐採面積が減り、若い林が減少してきたことが原因と考えられます。一方、大型・中型ほ乳類は分布域が増加していました(図2)。これは狩猟者数の減少や、耕作放棄地による野生動物の里山への誘引などが原因になっていると考えられました。

樹木の多様性の評価

世界的にも植物の多様性の変化はまだ評価されたことがありません。日本にも樹木の多様性変化を国レベルで評価するための十分なデータはありませんでした。そこで森林総合研究所が所有する森林動態データベースを含む全国11地点の調査結果を基に、同じくリビングプラネットインデックスを用いて1990年代から2000年代の老齢林の変化の傾向を調べました。また樹木の個体数だけでなく、樹木の太さも指標に加えました。その結果、樹木は徐々に太くなっており、個体数の軽微な減少は樹木の成長によるものであることがわかりました(図3)。このことから今回解析を行った老齢林では樹木の多様性は減少しておらず、樹木はいまも成長傾向にあることが明らかになりました。

本研究で開発した日本版リビングプラネットインデックスによって、国レベルの生物多様性変化の評価が可能になりました。またこの指数を用いた評価結果は「環境省生物多様性総合評価報告」などに利用されました。本研究の成果はCBD/COP10で新たに設定された目標達成の評価にも活用することができます。

本研究は、運営交付金プロジェクト「生物多様性条約2010年目標達成評価のための森林リビングプラネットインデックス開発に関する研究」によって行われました。

*リビングプラネットインデックス
長期にわたる地域的な生物の個体数、種数、巣の数などの情報を基に、生物多様性の変化を図示するための指数。生物多様性条約事務局が発行するグローバル・バイオダイバーシティ・アウトルック(通称GBO)でも使われた。
具体的データ
図1
図2
図3
研究担当者岡部 貴美子(森林昆虫研究領域)、小川 みふゆ(森林昆虫研究領域(特別研究員))、山浦 悠一(森林昆虫研究領域(特別研究員 現:北海道大学))、小泉 透(森林動物研究領域)、家原 敏郎(森林管理研究領域)、光田  靖(四国支所)、高橋 正義(北海道支所)、阿部 真(森林植生研究領域)、杉村 乾(国際連携拠点)、服部 力(関西支所)、田中 伸彦(企画部(現:東海大学))
発行年度2011
収録データベース研究成果情報

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