木質バイオマス発電事業はもうかるか 事業採算性評価ツールの開発

木質バイオマス発電事業はもうかるか 事業採算性評価ツールの開発

タイトル木質バイオマス発電事業はもうかるか 事業採算性評価ツールの開発
要約固定価格買取制度(FIT)の下で、発電規模や燃料の種類を変更した場合に、木質バイオマス発電事業の経済性がどのように変化するかをシミュレートし、事業採算性を簡単に評価できるツールを開発しました。
担当機関(独)森林総合研究所 木材特性研究領域
(独)森林総合研究所 林業経営・政策研究領域
(独)森林総合研究所 加工技術研究領域
(独)森林総合研究所 林業工学研究領域
(独)森林総合研究所 植物生態研究領域
(独)森林総合研究所 東北支所
(独)森林総合研究所 九州支所
(独)森林総合研究所 森林管理研究領域
(独)森林総合研究所 四国支所
(独)森林総合研究所 研究コーディネータ
区分(部会名)森林
背景・ねらい再生可能エネルギーの導入を促進するため、電力の固定価格買取制度(FIT)が始まりました。この制度を利用して、これまでほとんど利用されなかった林地残材や間伐材等を燃料とする発電所の建設が進められています。こうした木質バイオマスを燃料とする発電事業の経済性を評価するためには、煩雑な計算が必要です。森林総合研究所では、全国の発電所から収集したデータに基づいて、種々のコストを推計・統合して、簡単に経済性評価が行えるツールを開発しました。これにより、発電規模や燃料バイオマスの種類、買取価格等が違う場合の木質バイオマス発電事業の経済性をシミュレートし、事業採算性を簡単に推計することができるようになりました。

再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)
Feed-in Tariff(FIT)とは、再生可能エネルギーの買い取り価格を法律で定める方式の助成制度。
成果の内容・特徴FIT と木質バイオマス発電
2012 年7 月に固定価格買取制度(FIT)が始まりました。この制度は、再生可能エネルギー(風力、太陽光、地熱、水力、バイオマス)の利用拡大と技術開発を促進することを目的としています。この制度の下で、再生可能資源である木質バイオマスを燃料とする発電所の建設が全国各地で進められています。木質バイオマスは未利用材(林地に残された間伐材など)、一般木材(製材の際の残材など)、リサイクル木材(建設物から発生する木材など)等に分類され、それぞれを燃料として発電した場合の電力の買取価格が異なります。

木質バイオマス発電の経済性
FIT の下では、間伐材等由来の未利用材を燃料とした電力のFIT 買取価格は32 円/kWh(H26 年度)です。この価格での売電収入は、例えば、発電規模5,000 kW(送電端)の発電所で年間330 日稼働すると、約12.7 億円と試算されます。この収入と、支出のバランスを比較して、事業の経済性は判断されます。支出の項目は、燃料費、プラントの減価償却費、固定資産税、保守・点検費、人件費、一般管理費、保険費、ユーティリティ費(水、薬品費用等)、灰処理費など多肢にわたっています。これらの項目は、発電規模と関連するものが多いので、経済性を評価するためには発電規模に応じた支出の変化を明らかにする必要があります。

事業採算性評価ツール
そこで、森林総合研究所では、木質バイオマス発電の調査を全国規模で実施し、発電規模と建設費との関係や発電効率との関係を定式化し、これらの式を統合して、木質バイオマス発電の事業採算性を評価するツールを作成しました(図1)。このツールを用いることにより、FIT における木質バイオマス発電に関して、発電規模や燃料バイオマスの種類、買取り価格の違い等の初期条件を様々に変えた場合の多彩な事業評価が簡単にできるようになりました。

ツールの活用法

本ツールを使うと、複数の燃料の混合比率を変えながら事業採算性を評価することも可能です。例えば、未利用材チップ(8,000 円/t- 含水率 50%湿量重量基準)とヤシ殻(12,000 円/t- 含水率10%湿量重量基準)を混合する場合には、未利用材チップの混合割合が高いほど事業採算性が高くなることがシミュレーションによって確認できました。また、将来燃料価格が上昇する場合を想定してシミュレーションすることも可能で、燃料価格の上昇は事業採算性を著しく悪化させる可能性も示唆されました。このように、本ツールは、事業者や自治体のみなさんが、木質バイオマス発電事業の実施検討や、既存事業の適正な燃料価格の検討をする際に活用でき、さらに今後のFIT 制度の見直し等でも活用が期待されます。

本研究は、森林総合研究所交付金プロジェクト「木質バイオマスエネルギー事業の評価システムの開発」による成果です。

含水率
木材の含水率の算出方法は2 種類あり、湿量重量基準はエネルギー分野、乾量重量基準は木材製品や製材分野において使用される。
具体的データ
図1
研究担当者柳田 高志(木材特性研究領域)、久保山 裕史(林業経営・政策研究領域)、都築 伸行(林業経営・政策研究領域)、山本 伸幸(林業経営・政策研究領域)、吉田 貴紘(加工技術研究領域)、伊神 裕司(加工技術研究領域)、藤本 清彦(加工技術研究領域)、陣川 雅樹(林業工学研究領域)、吉田 智佳史(林業工学研究領域)、佐々木 達也(林業工学研究領域)、中澤 昌彦(林業工学研究領域)、宇都木 玄(植物生態研究領域)、天野 智将(東北支所)、横田 康裕(九州支所)、西園 朋広(森林管理研究領域)、垂水 亜紀(四国支所)、北原 文章(四国支所)、木口  実(研究コーディネータ)
発表論文柳田(2014)木質バイオマス発電と固定価格買取制度、木材工業69:424-429
柳田 他(2015)再生可能エネルギー固定価格買取制度を利用した木質バイオマス発電事業における原料調達価格と損益分岐点の関係、日本エネルギー学会誌94:311-320
発行年度2015
オリジナルURLhttp://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2015/documents/p28-29.pdf
収録データベース研究成果情報

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