イネの遺伝子を使ってポプラの木質バイオマスの増産に成功

イネの遺伝子を使ってポプラの木質バイオマスの増産に成功

タイトルイネの遺伝子を使ってポプラの木質バイオマスの増産に成功
担当機関(国)森林総合研究所 森林バイオ研究センター
産業技術総合研究所
区分(部会名)森林
背景・ねらい地球温暖化抑制のため、二酸化炭素など温室効果ガスの削減が緊急の課題となっています。樹木は何十年、何百年と成長するなかで、木質として大量のバイオマスを蓄積します。本研究では、木質生産を制御するイネの遺伝子を利用し、木質バイオマスを増産させる技術を開発しました。さらに、その技術をポプラへ応用することによって、樹木の成長に影響を与えることなく木質の生産性を向上させることに成功しました。本研究で開発した技術によって、将来的には樹木の炭素貯蔵能力の向上と木質由来のバイオマスやバイオエタノールの増産が期待できます。
成果の内容・特徴研究の社会的背景
地球温暖化を抑制するために、温室効果ガスの中長期的な削減が求められており、石油などの化石燃料の代替として、植物由来の燃料や材料の開発が進められています。樹木は温室効果ガスである二酸化炭素を光合成により吸収し、炭素として長期間固定し続けることができます。地球上に存在するバイオマスの中で最も多くを占める木質バイオマスは、長期的な炭素の貯蔵庫として、同時に、食糧と競合しない第二世代のバイオエタノールやバイオマスマテリアルの原料として普及が期待されています。このため、樹木の木質バイオマスの生産性を向上させることは、重要な課題です。

木質バイオマスを増産させる技術
木質の実体は植物が産みだす細胞壁であり、細胞壁の堆積量を増やすことによって木質を増強することができます。モデル植物であるシロイヌナズナでは、NST1 転写因子とNST3転写因子が木質生産を制御しており、その相同遺伝子であるイネのOsSWN1転写因子は木質生産を非常に強く活性化します。そこで、OsSWN1遺伝子を木質の構成要素である木部繊維で発現させる遺伝子コンストラクトを作製し(図1)、シロイヌナズナに導入しました。その結果、組換えシロイヌナズナでは、木部繊維の細胞壁が厚くなり、さらに通常では木質生産が起きない部位でも木質の蓄積がみられました。これは、木質バイオマスが増産されたことを意味します。

木質バイオマス増産技術のポプラへの応用
木部繊維は、広葉樹の木材で多くの割合を占める主要な構成要素です。そこで、シロイヌナズナで確立された技術をポプラの木部繊維へ応用し、遺伝子組換えによる木質バイオマスの増産を試みました。作成した組換えポプラを鉢上げして詳細に調べたところ、成長への悪影響は確認されず(図2)、木部繊維の細胞壁の厚みが増加していました(図3)。また、茎の平均密度は非組換えポプラと比較して約4割向上し、木材強度も約6割高くなっていました。

今後の展望
本研究で開発した技術によって、樹木の炭素貯蔵能力の向上や木質バイオマスの増産、強度の高い木材の開発につながります。今後は、木質に含まれるリグニンを改変する技術などを組み合わせることにより、バイオエタノールの原料となる糖の抽出効率の向上を目指します。

本研究は、戦略的創造研究推進事業(先端的低炭素化技術開発:ALCA)「ゼロから創製する新しい木質の開発」による成果です。

詳 し く は Sakamoto, S. et al. (2015) Scientific Reports, 6:19925 をご覧下さい。

シロイヌナズナ
植物の遺伝子研究分野において用いられているモデル植物。

NST1、NST3転写因子
シロイヌナズナの木質生産に関わる遺伝子の働きを制御しているおおもとの調節タンパク質。

OsSWN1転写因子
イネの木質生産を担う遺伝子群の働きを制御している転写因子。NST1、NST3転写因子とアミノ酸の並び(配列) が類似している相同転写因子。

木部繊維
木部組織に見られる細長い細胞で、細胞壁が厚く堆積する。

コンストラクト
生物で遺伝子を機能させるために、プロモーターと遺伝子、その他遺伝子発現に必要な要素を組み合わせて構築したDNA。
具体的データ
図1
図2
図3
研究担当者高田 直樹(森林バイオ研究センター)、谷口 亨(森林バイオ研究センター)、坂本 真吾(産業技術総合研究所)、光田 展隆(産業技術総合研究所)
発行年度2016
オリジナルURLhttps://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2016/documents/p74-75.pdf
収録データベース研究成果情報

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