本研究では,チャバネアオカメムシPlautia crossota staliの複眼の外部および内部構造を詳細に観察し,視覚定位行動において機能的な役割を果たす複眼の構造的部域差について検討した。チャバネアオカメムシの赤道面前方部域の個眼は,背側や腹側の領域に比べて個眼間密度が高く,角膜レンズや円錐細胞などの光学系構造が大きいことや,長い感桿構造をもつことから,空間分解能と感度が共に高い部域である複眼のフォベアであることが強く示唆された。本種は光に対して強い走光性を示すが,本種が上方光源に対して視覚定位する際,姿勢を変えて複眼の赤道面前方部付近のフォベアで光をとらえていることが明らかになった。また,複眼の背側領域の一部には,中心視細胞であるR7とR8の感桿の微絨毛の配向は直交配向で偏光アナライザー機能をもち,微絨毛の直交配向は途中で変化せず,光軸は天頂方向へ向き,感桿の長さが短く,角膜レンズは他の部域に比べて平らで円錐細胞も短い,といった天空の偏光パターンの弁別に関わる複眼背縁部(dorsal rim area)の構造特徴を示す個眼領域が確認された。