アラゲキクラゲ(Auricularia nigricans; A. polytricha)は食用きのことしてよく知られているが,日本国内で消費されるキクラゲ類の実に97%が輸入品で占められている。一方,近年の輸入食品の安全性に関するリスクの顕在化により,徐々に外食産業ではアラゲキクラゲの国内生産品に回帰する動きが出始めており,増産する傾向にある。それに伴いアラゲキクラゲの栽培において子実体上に綿毛状のカビが発生し,ついには子実体を溶解してしまう病害が問題となってきている。そのため,本研究ではこの病害の原因菌を特定するとともに,本病害の発生環境条件を明らかにすることによりその防除方法を提案した。この綿毛状のカビの不完全世代と完全世代の形態学的な観察結果から,このカビをHypomyces pseudocorticiicola Tokiwa and Okudaと同定した。また本菌の分生子を用いて病原性試験を行ったところ,綿毛状の病徴が再現されたことから,H. pseudocorticiicolaが本病害の原因菌であると決定した。綿毛状の病徴から本病害をアラゲキクラゲ綿腐病と命名した。さらに本病原菌の4温度区における菌糸伸長速度は25>20>15>30℃という順になった。アラゲキクラゲの栽培適温は15-30℃とされているため,温度を制御することによる防除は難しいが,本病害は多湿環境下で多発することから,キクラゲ類の栽培においてありがちな子実体や栽培棚が常に湿った状態が続くことを避け,乾湿差をつけた栽培が本病防除の有効策と思われる。