放射線照射および組織培養によるグラジオラス花色変異体の作出に関する研究

放射線照射および組織培養によるグラジオラス花色変異体の作出に関する研究

レコードナンバー630913論文タイプ学術雑誌論文
ALIS書誌IDZZ00017577NACSIS書誌IDAA11232364
著者名霞 正一
書誌名茨城県農業総合センター生物工学研究所研究報告 = Bulletin of the Plant Biotechnology Institute, Ibaraki Agricultural Center
別誌名Bull. Ibaraki Plant Biotech. Inst
茨城農総セ生工研研報
発行元茨城県農業総合センター生物工学研究所
巻号,ページ4号, p.1-49(2001-03)ISSN13412809
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抄録これまで,グラジオラスの実用品種の大部分は交配育種により育成され,放射線照射および培養変異による突然変異体の利用はほとんどなかった。これは,誘発される花色変異が区分キメラとなり,異変が個体全体におよぶ突然変異体(完全突然変異体)の作出が困難なためである。そこで,本研究ではグラジオラスにおいて実用品種としての利用可能な花色突然変異体を作出する方法を確立することを目的に,放射線照射と組織培養を併用した有効な花色突然変異誘発の方法を検討するとともに,生じた突然変異セクターから完全突然変異体を作出する方法を検討した。さらに,これらの方法によって得られた花色変異系統の特性と実用性について検討した。 1)木子茎頂,木子片,葉片の3種類を外植体として培養を行った結果,木子茎頂は不定胚形成率が最も高く,取り扱いも容易であり,外植体としてもっとも優れていることが明らかとなった。また,不定胚由来の個体は花器形態,花色などが原品種‘トラベラー’とほぼ同一であった。よって,グラジオラスの簡便かつ効率的な不定胚培養系を確立した。 2)花被片に生じた変異セクターから完全突然変異体を得るための培養に用いる外植体として,花被片の上部,基部および開花2~3日前の子房(花蕾子房)を比較したところ,花蕾子房がカルスおよび不定芽形成ともに最良であった。培地に添加する植物成長調節物質では,花蕾子房からのカルス形成はMS培地にNAA,BAPともに5mg/lを添加した場合,カルスからの不定芽形成はMS培地に2mg/lBAPを添加した場合がそれぞれ最良であった。花蕾子房由来の個体は,いずれも花器形態,花色などが原品種とほぼ同一であった。よって,単子葉植物では初めて,花蕾子房を用いた不定芽培養系を確立した。 3)木子茎頂からの不定胚由来個体の中から,低率ではあるが,花色についての完全突然変異体が得られた。また多くの不定胚由来個体に花被片半分以下の大きさの花色変異セクターが生じた。また,花色は淡色化および濃色化の両方向に変異した。一方,通常の栄養繁殖系で増殖した植物体にも,花被片半分以下の大きさの花色変異が観察された。この結果から,木子茎頂を培養することによって,花色変異が増幅するとともに,生じている変異から完全突然変異体を作出できることが明らかになった。 4)ガンマ線を照射した木子を1年間養成後,得られた成球を栽培すると,花色変異の出現頻度および成育障害は照射線量とともに増加した。この結果を総合的に判断して,花色突然変異誘発のための最適な照射線量を,100~200Gy(線量率10Gy/h)と推定した。また,花色は淡色化の方向に変異し,区分キメラとして発生することが多かった。照射材料に木子,成球のどちらを用いても花色変異体の出現頻度,花色変異の方向に差がなかったが,変異セクターは木子の方がやや大きかった。成育中の植物体への緩照射を行ったところ,花色変異セクターが花被片半分以下の小さなもののみであった。これらの結果に,照射コスト,材料の取り扱い易さ等を併せて検討した結果,花色突然変異誘発のための照射材料としては,木子がもっとも優れていると結論した。 5)花被片に生じた淡桃色の変異セクターに続く花蕾子房の部位を種々の大きさに分割して培養し,再生個体を得た。再生個体の内で淡桃色個体の占める割合は,分割程度が大きく,切片が小さいほど低い傾向にあったが,1小花の1/8の大きさの変異セクターからも淡桃色個体が得られた。すべての花色変異個体は完全突然変異体であった。よって,花蕾子房の培養を行うことによって花色変異セクターから完全突然変異体を作出できることが,単子葉植物において初めて示された。 6)培養前の木子または培養後形成されたカルスへガンマ線を照射した。カルスの発達および不定胚形成の阻害は,木子へ照射した場合の方が大きかった。得られた不定胚由来個体の花色変異は,木子に照射した場合の方が質的にも,量的にも大きい傾向にあった。さらに,照射材料としての取り扱い易さも勘案して,カルスよりも,培養前の木子への照射によって,花色変異体を効率的に得られると結論した。 7)品種‘ヘクター’,‘トラベラー’から得られた6つの花色変異系統の特性を原品種と比較したところ,多くの系統に草丈の低下,小花数の減少などが認められた。よって,グラジオラスの花色突然変異育種においては,花色以外の形質にも注意し,優良系統の選抜を行うことが必要と考えられる。花色変異系統には原品種の花色に戻る現象が低率ながら認められた。 8)以上,本研究を通じて,グラジオラスにおける放射線照射と組織培養を併用して花色突然変異体を作出する方法を確立した。この方法は,これまで花色に関する突然変異育種が困難とされていた他の栄養繁殖性の単子葉花き植物にも応用できるものである。
索引語アヤメ科;組織培養;ガンマ線;突然変異;再分化;キメラ
引用文献数88
登録日2011年03月05日
収録データベースJASI, AGROLib

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