抄録 | 88年4月~'95年11月に備讃瀬戸及び播磨灘北西部で漁獲されたマダイ627尾を標本とし、雌雄別の生殖腺熟度指数の推移と生殖腺の色調や様態から、成熟について検討した。 1. 標本群は尾叉長63~583mm、1~9歳であった。このうち雌は271尾、151~583mm、1~9歳、雄は217尾、145~492mm、1~8歳で、性別が不明な個体はそれぞれ137尾、63~225mm、1~2歳であった。また、両性生殖腺(卵巣部と精巣部を併有する)を保有する個体2尾がみられた。 2. 備讃瀬戸において比較的高いGIを示す個体が増加した時期は雌雄ともに4~6月で、このうち5月に最も多くなった。また、卵巣に完熟卵が認められる個体が最も多くなる時期は生殖腺熟度指数(GI)が最高となる時期と一致した。 3. 4~6月に採集された雌の成熟個体の年齢別出現率は2歳15.6%、3歳16.7%、4歳30.3%、5~9歳33.3~69.7%(平均50.4%)であった。このことから、成熟開始年齢は満2歳、生物学的最小型は229~236mmの近傍にあり、成熟年齢は半数以上が成熟する5歳以降と考えられた。 4. 備讃瀬戸において成熟個体が出現する時期は4~6月、播磨灘北西部では5~6月で、成熟開始時期には、1か月程度のずれがあった。また、後者では前者に比べて出現期間が短いことから、2つの海域には異なる系統群が分布していることが考えられた。 |