寒冷地に適したイチゴの新品種‘みやぎVS1号’と作型の開発に関する研究

寒冷地に適したイチゴの新品種‘みやぎVS1号’と作型の開発に関する研究

レコードナンバー650976論文タイプ学術雑誌論文
ALIS書誌IDZZ20006282NACSIS書誌IDAN00350418
著者名庄子 孝一
書誌名宮城県農業センター研究報告
別誌名Bulletin of the Miyagi Prefectural Agricultural Research Center
宮城農セ報
発行元宮城県農業センター
巻号,ページ66号, p.1-60(1999-03)ISSN03883671
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抄録本研究は、これから求められるイチゴの周年需要に対応するとともに、宮城県の中山間地に受け入れられやすい品種と作型を開発することを主な目的としてまず初めに、これを進める上で、あらかじめ対策を講じておく必要のあるウイルス再感染の防止、収穫した果実の鮮度保持技術の開発など、寒冷地のイチゴ栽培における諸問題について検討した。次いで、高品質で休眠の深い寒冷地に適応した新品種の育成をはかるとともに、育成した新品種に適した育苗法と作型を検討し、その結果をまとめた。 1.ウイルスフリー苗配布事業開始16年目のイチゴウイルスの再感染程度は、比較的新しい産地である県北と県南部が高く、栽培歴が長く宮城県の主産地である亘理町と山元町では低かった。検出されたウイルスは大部分がSMYEVで、SMVとSCVは少なかった。 2.露地オープンの状態では1~2年でウイルスに再感染したが、寒冷紗(白#300)で隔離栽培すると2年間はほぼウイルスフリーで経過した。 3.果実を冷蔵によって鮮度保持する方法としては、高温果実の場合、冷蔵後の正常果率が100%で、カビ果発生率が0%、熟度が80%程度になる実用的な組み合わせは、30%着色果を収穫して予冷(8~10℃)4時間+本冷(0±1.5℃)36時間の区のみであった。低温果実の場合、冷蔵後の正常果率が100%で、カビ果発生率が0%、熟度が80%程度になる実用的な組み合わせは、50%着色果を収穫して予冷(8~10℃)4時間+本冷(0±15℃)36時間の区のみであった。 4.室温4時間+冷蔵(0±L5℃)36時間+室温5時間で貯蔵する場合に、鮮度保持剤を利用するときは、冷蔵後の正常果率が100%、カビ果発生率が0%、熟度が80%程度になる実用的な組み合わせは、50%着色果を収穫して、2,500~10,000ppmの鮮度保持剤{安定化二酸化塩素剤(=商品名:フレッシュキーピング)}を施用した区のみであった。 5.休眠打破に5℃以下の低温が1,000時間必要である‘盛岡16号'の生理的休眠最深期において、低温遭遇積算時間を600時間に減らして半促成栽培を行うと、市場性の高い3月の早期収量が増加しただけでなく、全期間の果実収量も多くなった。本実験で簡易低温積算計を製作し、この装置で低温遭遇積算時間を計測して過去19年間の平均自然低温量(名取市)と照らし合わせたところ、宮城県名取市では5℃以下の低温遭遇積算時間が600時間となるように保温を開始する時期は12月第5半旬頃であることが示された。 6.‘盛岡16号'を生理的休眠最深期の前後に保温すると、その時期に積極的に低温遭遇させる短期株冷蔵した場合より果実収量が多かった。その理由として、休眠前後にあたる12月5日~1月13日まで保温すると、短日条件で花芽形成温度帯域である5~24℃に管理され、その結果として花芽の形成数が増加したと考えられた。 7.休眠打破に必要な低温遭遇積算時間の長い‘盛岡16号’は休眠前後の保温育苗によって休眠覚醒が適度に行われるとともに、花数が増加し、低温期の不時出蕾も少なかったことから、合計果実収量が増加した。したがって、宮城県の平地から中山間地で半促成栽培を行う場合‘盛岡16号’の低温遭遇積算時間としては、定植時からの全期間累計で600~650時間が適当と思われた。 8.宮城県の平坦地で宝交早生を用いて長期株冷蔵栽培を行う場合には、秋季の果実収量と果実品質からみて、出庫・定植時期の早期限界が9月20日頃とみられた。 9.‘宝交早生’の長期株冷蔵後に出庫して9月に定植する苗の順化方法としては、果実収量からみて、出庫後流水に浸漬せずに3時間室温に放置する方法も有効と思われた。 10. ‘盛岡16号’を用いた長期株冷蔵栽培においても、秋季収穫後に保温育苗を行うと、花芽形成数が増加して、春季(翌春)の果実収量が増加した。長期株冷蔵前の保温育苗によって苗質が向上するとともに、秋季および春季用の花芽が増加した。保温育苗の効果は、21g以上の中苗26g以上の大苗で増収効果が著しく認められた。 11.新品種‘みやぎVS1号’を育成した。‘みやぎVS1号’は草勢が強く、花房が立性になるとともに、果実揃いが良く、硬くて光沢があり、日持ちが良い反面、酸味が強くて、食味が劣る‘Pajaro'を種子親とし、休眠が深く、大果で、食味、光沢、硬さ、日持ちが良いなど、果実品質が優れているが、黒斑病、うどんこ病などに弱い‘盛岡16号'を花粉親として育成された品種である。 12.‘盛岡16号'を対照品種とすると、‘みやぎVS1号'の草勢は中程度で、分けつは少なかった。葉色は濃緑色で、小葉の大きさは中、葉柄の長さは短~中であった。ランナーは発生が早く、発生数も多かった。花柄長は短~中、花柄の太さは中、花柄切断の難易は中であった。1花房当たりの花数は少なく、果実の大きさは大、果形は球円錐、第1果と第2果の果形の差は中、無種子帯は少、果皮色は鮮紅、果実の光沢は良、そう果の落ち込みは小であった。果実の硬さは硬、果肉色は黄白、果芯の色は淡赤、果実の空洞は小であった。可溶性固形物含量および酸度は中~高、果実の香りは中であった。花芽形成開始期は9月30日頃、開花開始期は晩、成熟期は中、成熟日数は短~中、季性は一季成り性、休眠性は長であった。病害抵抗性はうどんこ病と灰色かび病に対しては中、萎黄病に対しては低炭そ病と黒斑病に対しては高であった。 13.‘みやぎVS1号'は冬季間自然の低温に遭遇させると休眠覚醒が過剰に進むとともに、花芽形成数が少なくなって、果実収量が著しく低いことが示された。そこで、冬季間に不織布で保温して花芽形成期間を長くすると、休眠覚醒後の栄養成長を適度に抑制するとともに、花数が増加した。 14. ‘みやぎVS1号’は、宮城県の平地において露地栽培する場合、不織布で晩秋~春に被覆して保温することによって花芽形成数が増加し、適度に休眠覚醒することから、寒冷地に適した品種として有望であるとみられた。 15.‘みやぎVS1号'では雨除け栽培の場合も冬季間の不織布での被覆が必要であると考えられた。不織布で冬季間被覆しない場合でも2年株を利用して主枝数を多くすれば1株当たりの収穫果数が多くなるので、営利栽培が可能と思われた。16.‘みやぎVS1号'は冬季間に不織布で保温すると、早熟栽培でも‘盛岡16号'より収穫開始が早く、5月の果実収量が多くなった。 17.‘みやぎVS1号'は冬季間に不織布で保温しないで、5℃以下の低温に500~700時間遭遇させた段階で保温する半促成栽培を行うと花芽形成数が不足し、収穫果数が少なくなった。 18.高冷地で6月と7月に果実生産を行う場合、‘みやぎVS1号'の2年株を使うことによって、従来品種の‘盛岡16号’より高い果実収量が得られた。 19.以上の結果、‘みやぎVS1号'は果実品質が優れていること、収穫後の日持ちが良いこと、冬季間に不織布で被覆して過剰な低温遭遇量を減少させると、花芽形成数が多くなって果実収量が増大すること、2年株を利用すると果実収量が多くなること、降雨により多発する炭そ病に強いことから、中山間地、高冷地での露地マット栽培やハウス早熟栽培での多年無仮植栽培が適するものと思われた。 20.休眠が長い‘みやぎVS1号'を使って、宮城県の中山間地で夏出しイチゴ栽培を実用化しようとした本研究成果を発展させれば、夏季冷涼な宮城県沿岸北部地域でも新たな可能性を見い出すことができるものと期待される。
索引語イチゴ;新品種;育種;寒冷地;低温;作型;鮮度;貯蔵
引用文献数21
登録日2011年03月05日
収録データベースJASI, AGROLib

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