抄録 | 1)1年を通じての資源量調査から、今まで不明あった夏季の大量斃死による資源変動を把握した。 2)タイラギ餅は、1才貝以上はみられないものの調査開始当初は貝が200~400個体/m2の高い密度で発生していた。 3)タイラギの発生している漁場面積は狭く、大牟田沖に限られていた。 4)タイラギ資源は'00年の7月初旬から8月初旬にかけて急激な生息密度の減少がみられ、その後徐々に減少する傾向が続いた。9月中句から10月下旬にかけて一旦資源の減少がおさまったものの11月に入り再び斃死が始まり、11月初旬の調査では各調査点で減少が観察された 5)生殖腺の観察から本年度のタイラギの産卵期は7月下旬から9月中旬であると考えられた 6)溶存酸素の連続観測を行った結果、タイラギの主漁場であるStn.1で8月初旬にプランクトンの大量発生によると思われる溶存酸素の減少(酸素飽和度約39%)が観測され、夏季の大量斃死の原因の一つではないかと考えられた。 7)夏季の大量斃死は、成熟産卵による活力の減少時に漁場での環境の変化(水温の上昇、貧酸素、塩分の低下)が起こったことにより、高密度に生息するタイラギに斃死が起こったと考えられた。 8)11月初旬から起こった資源量の減少は、10月中旬からのプランクトン発生が例年に比較して低かったことから、夏季に衰弱した貝が摂餌を行い活力を取り戻す時期に、餌となるプランクトンが不足していたため速やかに活力が戻らなかったことが原因であり、貝柱の黒ずみやヤセも同じ原因であると推測された。 |