海藻の乳酸発酵に関する研究

海藻の乳酸発酵に関する研究

レコードナンバー721904論文タイプ学術雑誌論文
ALIS書誌IDZZ20003079NACSIS書誌IDAA11589591
著者名内田 基晴
書誌名水産総合研究センター研究報告
別誌名水研センター研報
Bull. Fish. Res. Agen
発行元水産総合研究センター
巻号,ページ14号, p.21-85(2005-03)ISSN13469894
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抄録我々の身の回りには,古くから発酵技術を利用した様々な食品が溢れており,食卓を豊かに彩るとともにヒトの健康維持にも貢献している。しかし,これら発酵食品のほとんどは,陸上の生物素材から作り出されたものであり,海洋由来の生物素材,特に海洋系の植物性素材(藻類)を利用した発酵食品は,皆無といってよい。食糧生産という分野に広げてみても,農業分野では堆肥技術,畜産分野ではサイレージ技術といった発酵を利用して食糧生産に結びつける技術が陸上一次産業では存在するのに対し,水産分野では類似の技術がない。これらの理由として,これまで藻類の発酵技術が食品・食料分野でほとんど開発されてこなかったことを指摘できる。本研究では,海洋系の植物性素材の代表ともいえる海藻を乳酸発酵させる技術及びこれをさらに発展させた単細胞化・乳酸発酵させる技術を初めて開発するとともに,これにより得られる海藻発酵素材の水産餌飼料としての有用性及び食料として利用された場合の脂質代謝改善作用の効能を明らかにし,海藻資源の新しい利用法の可能性を示した。本論文の構成は次の通りである。第1章での序論に続き,第2章では,実験室で偶然得られたアオサ(Ulva spp.)発酵試料中の微生物相を精査し,それが,特定の乳酸菌・酵母が優占して達成されるアルコール発酵を伴った乳酸発酵であることを明らかにした。また,セルラーゼによる藻体の糖化処理と組み合わせて,上記で分離された3種類の微生物からなるコンソーシアムをスターターとして添加することで,海藻の種類を選ばず発酵を達成することができることを明らかにした。第3章では,藻体組織の脆弱なワカメを発酵基質として選び,藻体を単細胞化・乳酸発酵させる技術を開発するとともに,その場合の好適な(発酵)培養条件を明らかにした。さらに得られた海藻発酵素材の産業利用を視野に入れ,大量生産技術の検討と長期保存性の確認を行った。第4章では,発酵試料中の微生物相を迅速にモニタリングするために,PCRを用いて乳酸菌,酵母の菌種を迅速に同定する手法を開発した。さらに,このモニタリング手法を用いて,乳酸菌と酵母の組み合わせを変えて投与した場合の発酵成績への影響とスターター使用に適した乳酸菌種を明らかにした。第5章では,海藻発酵素材の水産餌試料素材としての利用に向けて,二枚貝稚貝への飼料的価値を明らかにするとともに,ラット食餌試験により脂質代謝改善作用を有することを明らかにし,健康機能性食品素材としてのポテンシャルを明らかにした。最後に第6章で,今後の研究の発展性にも触れた総合的考察を行った。本研究の成果は,単に一つの素材開発に留まらず,低未利用海藻資源の“マリンサイレージ”という形態での利用,あるいは最終的には“海洋系植物性基質発酵産業”の創出を提案するなど,新しい概念の形成にも結びついた。
索引語発酵;技術;素材;利用;海藻;食品;海洋;乳酸;研究;生物
引用文献数104
登録日2011年03月05日
収録データベースJASI, AGROLib

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