トランスポゾンによって誘発されたアサガオの有用形質

トランスポゾンによって誘発されたアサガオの有用形質

レコードナンバー770480論文タイプ学術雑誌論文
ALIS書誌IDZZ00002091NACSIS書誌IDAA00653145
著者名仁田坂 英二
書誌名Gamma field symposia
発行元Institute of Radiation Breeding, Ministry of Agriculture & Forestry
巻号,ページ46号, p.73-79(2009-01)ISSN04351096
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抄録アサガオには花の色や模様だけでなく、様々な形態形成変異体が保存されている。これまで解析された変異体のほとんどの原因遺伝子にEn/Spm(CACTA)スーパーファミリーに属するTpn1ファミリーというトランスポゾンの挿入もしくは挿入していた痕跡がある。そのため、このTpn1ファミリーがアサガオの品種分化に主要な役割を果たしてきたと考えられる。現在観賞されている変化アサガオ(形態形成突然変異体)の多くの系統には、花弁数を増加させる変異が導入されている。一つは典型的なC機能MADS-box遺伝子の突然変異体である、牡丹(pt)であり、雄ずいが花弁に転換し、雌ずいが花弁と萼からなる花の繰り返し構造を示し、不稔である。もうひとつは八重咲(pt)では雄しべの葯の部分のみ花弁化し、稔性は保持している。これらは別遺伝子座の変異だと思われていたが、交配実験によって、同じ遺伝子の変異であることが明らかになった。遺伝子構造から、まずTpn132が既に挿入している野生型遺伝子の第2イントロンに、Tpn109が挿入して八重咲変異体が出現し、稔性があるため保存された。次に挿入しているトランスポゾンが転移する際に、Tpn109とゲノム領域を欠失した牡丹変異が生成し、強い表現型を示すため、八重咲から選抜されたと考えられる。変化アサガオの主要なジャンルに獅子(fe)変異体を基本とした系統群がある。組織の観察から、この獅子変異体では向軸(表)側が背軸(裏)側に転換していることが明らかになった。挿入しているTpn102トランスポゾンを指標にしてこの獅子変異の原因遺伝子の単離に成功したが、その原因遺伝子はシロイヌナズナにおいて背軸側の器官発生の運命を決定しているKAN1の同祖遺伝子であった。このことは表現型の観察結果とも一致する。多様な表現型を示す獅子系統の獅子突然変異遺伝子のゲノム構造を解析したところ、驚いたことに全て同じ構造をしていた。つまりこの獅子系統については、前述の牡丹変異の例とは異なり、まず単純で稔性のある獅子変異(乱獅子)が保存され、その後強い表現型を示す系統を選抜していく過程で、獅子変異の表現型を強化するような修飾変異を持つ系統が選ばれたと考えられる。ここで見てきた牡丹、獅子変異の例を見ても、いずれも単一起源の稔性のある弱い変異の維持から出発して、最終的に不稔で強い表現型の系統の維持に成功している。しかし、前者では挿入しているトランスポゾンが再配列を起こしたもの、後者では修飾変異との多重変異体を選抜することによって強い表現型の系統を得ている。これらの手法は、現在の育種学や遺伝学で盛んに用いられている。江戸時代の栽培家は意図せずにこのような科学的な手法でアサガオの改良に取り組んでいたのである。
索引語表現型;変異;アサガオ;トランスポゾン;獅子変異;稔性;変異体;不稔;保存;原因遺伝子
引用文献数16
登録日2011年07月26日
収録データベースJASI, AGROLib

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