火傷病菌及び類縁細菌の系統解析と検出方法に関する研究

火傷病菌及び類縁細菌の系統解析と検出方法に関する研究

レコードナンバー772216論文タイプ学術雑誌論文
ALIS書誌IDZZ20011311NACSIS書誌IDAA11651334
著者名松浦 貴之
書誌名中央農業総合研究センター研究報告
別誌名独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構中央農業総合研究センター研究報告
独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構中央農業総合研究センター研究報告
独立行政法人農業技術研究機構中央農業総合研究センター研究報告
Bull. NARO Agric. Res. Cent.
Bulletin of the NARO Agricultural Research Center
Bull. Natl. Agric. Res. Cent.
Bulletin of the National Agricultural Research Center
中央農研研報
発行元農業技術研究機構中央農業総合研究センター
巻号,ページ13号, p.1-45(2009-03)ISSN18816738
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抄録火傷病は,火傷病菌(Erwinia amylovora)によって引き起こされるナシ,リンゴの最も重要な細菌性病害の一つで,1780年代に,アメリカ合衆国の東部で初めて確認された。これまでに,北米大陸,ヨーロッパ地域,中東地域等40ヶ国以上で発生し,時に甚大な被害を及ぼしている。本研究では,バラ科植物(特にリンゴ・ナシ)に火傷病及び火傷病類似の病害を引き起こす3種類の細菌(火傷病菌,ナシ枝枯細菌病菌,Erwinia pyrifoliae)について,分子系統解析を試みた。さらに,それら細菌を検出・識別するための特異的なPCRプライマーセットを設計した。また,火傷病罹病植物からの直接的PCRによる診断時に,擬陽性反応を起こす可能性のあるニホンナシ花器に生息する常在細菌の調査を行うとともに,既存の簡便な手法を利用し,実際の利用場面において検出に適した試料の採取部位及びその検出感度について調査を行った。火傷病菌,ナシ枝枯細菌病菌,E. pyrifoliaeについて,16S rRNA遺伝子,gyrB遺伝子,rpoD遺伝子の部分的塩基配列を決定し,分子系統解析を行った。その結果,3種類の細菌は2つのグループに分かれた。グループ1は火傷病菌,グループ2はナシ枝枯細菌病菌ならびにE. pyrifoliaeを含んでいた。火傷病菌のgyrB,rpoD遺伝子の配列は,ほとんど同一であった。一方でナシ枝枯細菌病菌は互いにわずかに配列が異なっていた。このことは,火傷病菌が分子系統学的にはほぼ単一の系統が広く世界に伝搬したのに対して,ナシ枝枯細菌病菌は限られた地域に多様な系統が存在していたことを示唆した。rpoD遺伝子の塩基配列からグループ1,グループ2それぞれを検出・識別するための特異的プライマーセットを設計し,実際に各菌株を用いてその特異性を調査した。グループ1特異的プライマーセットは火傷病菌のみで,単一の375bpのDNA断片の増幅が確認された。また,グループ2特異的プライマーセットはナシ枝枯細菌病菌,E. pyrifoliaeのみで,単一の375bpのDNA断片の増幅が確認され,その検出限界は10 4~5cfu/mlであった。国内のニホンナシの花器から網羅的に細菌を分離し,火傷病菌ならびにAsian pear blight pathogenに対する類縁性,及び特異的プライマーセットを用いたPCR診断法で擬陽性反応を起こす細菌の存在について検討した。茨城,長野,鳥取各県から採取した花器より表生細菌の分離を行い,338株の細菌株を得た。16S rRNA遺伝子の部分的塩基配列から属を推定したところ,大部分がPseudomonas属またはEnterobacteriaceaeであった。得られた細菌株の中には,火傷病菌やE. pyrifoliaeに類似している細菌は存在しなかった。また,これら細菌株について,既存の火傷病菌特異的プライマーセット2種及び今回rpoD遺伝子の部分的塩基配列から作成したグループ特異的プライマーセットを用いてPCRを行ったところ,今回作成したグループ特異的プライマーセットが最も非特異反応がなかった。PCRによって病原体を罹病植物体から直接検出するために,PCR反応を阻害する物質の除去及び,罹病植物体のどの部位がPCR用試料として適しているかを調査した。発光遺伝子標識された火傷病菌及び野生の火傷病菌を盆栽ヒメリンゴの新梢に付傷接種し,細菌の再分離と直接的PCRを試みた。簡易磨砕容器で試料を磨砕し,ガラス繊維ろ紙を用いた簡便迅速なDNA抽出法により,PCR用の鋳型DNAを抽出して行った。PCR用試料として最適な部位は発病部と健全部の境界部位であり,その時の検出限界は切り出し部位あたり10 5~6cfuであった。これらの研究結果は,万が一火傷病菌が日本に侵入した際の同定作業の迅速性,正確性を高めることに寄与するとともに,他の植物病原細菌に対しても応用可能と考えられた。
索引語火傷病菌;火傷病;細菌;ナシ;検出;リンゴ;調査;病害;ナシ枝枯細菌病菌;直接的PCR
引用文献数81
登録日2011年03月05日
収録データベースJASI, AGROLib

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