飼料イネ専用品種の開発と超多収育種の展望

飼料イネ専用品種の開発と超多収育種の展望

レコードナンバー792312論文タイプ学術雑誌論文
ALIS書誌IDZZ00002091NACSIS書誌IDAA00653145
著者名坂井 真
書誌名Gamma field symposia
発行元Institute of Radiation Breeding, Ministry of Agriculture & Forestry
巻号,ページ47号, p.77-82(2010-05)ISSN04351096
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抄録ホールクロップサイレージ(Wcs)イネの作付けは全国で6,000Haに達しており、また近年の穀物価格の高騰により子実を利用する飼料米やバイオエタノール原料としての米の活用も模索されている。本文では、飼料用多収品種の特性や現在の品種開発状況、および今後の多収育種の展望について概説する。わが国の水稲育種の歴史の中で、1960年代には「レイメイ」、「ニホンマサリ」、「ホウヨク」等の短稈多収品種が育成され普及した。これらでは短稈化に加え、上位葉の直立化により受光態勢の改良が、日本のジャポニカ品種を素材として実現した。1970年代に入り本田転作が始まり、主食用以外の用途に向く超多収品種の育成が行われ、遺伝的背景拡大のために、インディカの育種素材が多用されるようになった。こうした「超多収」育種では、1穂籾数または粒重の増大によるシンク容量の拡大に力点が置かれ、大きくなったシンクを充填するために、半矮性インディカ等を用いた草型改良(葉の直立化)と転流効率を向上させる育種が試みられた。その成果として、「アケノホシ」、「ふくひびき」といった多粒穂のジャポニカ品種、「オオチカラ」に代表される大粒ジャポニカ品種、「タカナリ」、「ハバタキ」といったインディカ型品種が育成された。これら品種は、子実の多収性に特長があり、既存品種比10~30%の収量増が実証された。一方、1990年代末以降の飼料イネ品種の育種は、ホールクロップでの利用を前提に子実と茎葉を合わせた地上部全を増加させることを目標に進められている。こうした飼料イネ品種のうち特徴的なものとしては、長稈穂重型の草姿で地上部の多収を実現した「ホシアオバ」「クサノホシ」「クサホナミ」があげられる。これら3品種は半矮性インディカを祖先に持つ長稈で直立型草姿の母本が共通して用いられており、高乾物生産を実現している。また茎葉型品種として、「リーフスター」、「タチアオバ」と「たちすがた」があげられる。これらは耐倒伏性に関係する稈の太さや物理的強度や、根の支持力を特に重視した選抜が行われた品種であり、極長稈で大きな地上部を持ち茎葉の収量向上に力点が置かれている。最近育成された品種で子実収量向上に力点が置かれたものとして、「べこあおば」や「北陸193号」、「モミロマン」などがあげられる。これらは、それほど長稈ではなく、子実の大粒化や多粒穂化により高いシンク容量を実現しており、濃厚飼料の代替としての「飼料米」用やエタノール原料としての利用が検討されている。これらを含め、子実多収型の品種は、シンク容量は著しく拡大しているが、シンクの拡大幅ほどには子実収量が向上していない。この原因として登熟能力の不足が指摘されているが、それを改良するための母本や選抜対象形質は明らかになっていない。また、これまで育成された多収品種は、半矮性インディカを中心とする限られた祖先が多収性の素材として用いられており、さらなる改良のためには遺伝的背景を拡大する必要がある。収量性向上の方向性として、Wcs、茎葉型品種としては、作物体の大形化、葉身の直立配置や、少げつ化による受光態勢の改良が考えられる。この場合大形化した植物体を支えるための耐倒伏性強化が必要であり、これまで育成された耐倒伏性の強いWcs用品種が母本として有用と考えられる。子実型品種については、シンク充填のための乾物生産能力向上の必要がある。上述したWcs品種の高乾物生産性の導入もひとつの方策と考えられるが、この場合収穫指数をある程度高く保つため、子実と同化器官の同化産物配分の最適化が課題となる。将来的には、野生種も含めて光合成能力などについて全く新しい育種素材を探索し利用していく必要があると考えられる。これまでの育種の過程で形態で評価できる形質は取り込んだと考えられ、今後は目に見えない生理的な形質をいかにして選抜対象にできるかが課題である。
索引語品種;子実;これら;育種;実現;形質;シンク容量;力点;母本;展望
引用文献数5
登録日2011年07月19日
収録データベースJASI, AGROLib

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