抄録 | 加唐島では、かつて農業(畑作)が盛んであったが、麦・豆輸入の増加や芋自給の低下および高齢化等により、1980年代以降、農業は後退し、産業の中心は漁業にシフトした。それに伴って、半農半漁村としての性格は弱まり、漁村に純化した。そして1990年代にはイカ釣りを中心に漁業の最盛期が形成されたが、2000年代に入るとイカの不漁が続き、近年では燃料代の高騰がそれに追い打ちを掛け、漁業経営は極めて厳しい局面を迎えている。その結果、2000年代に漁業経営体数が激減し、漁業世帯(漁家)の兼業化が深化し、漁業後継者も減少し、島嶼の小規模漁村でありながら自営漁業以外に就業する人が増え、それまでは加唐島の「主要な産業」は漁業とされていたが、2003年漁業センサスではそれが遂に第3次産業であるとされるに至った。他方、加唐島は島全体に椿が自生し、併せて膨大な純粋無垢の自然が残っている。また農業は消滅し畑のほとんどは耕作放棄地化したが、それでも残された畑で高齢者によって自給的な作物生産が維持されてきている。こうして本島は、確かに漁業不振や少子高齢化といった日本社会の縮図的な問題に直面しているが、豊富な自然環境や椿の島としての特有の資源と元気な高齢者の存在をよりどころにして、新たな島興しの可能性を秘めている。 |