施設野菜害虫モモアカアブラムシに対するギフアブラバチの生物的防除資材としての有効性評価と利用技術の開発に関する研究

施設野菜害虫モモアカアブラムシに対するギフアブラバチの生物的防除資材としての有効性評価と利用技術の開発に関する研究

レコードナンバー831130論文タイプ学術雑誌論文
ALIS書誌IDZZ20006215NACSIS書誌IDAA11648748
著者名太田 泉
書誌名野菜茶業研究所研究報告
発行元農業技術研究機構野菜茶業研究所
巻号,ページ11号, p.1-33(2012-02)ISSN13466984
全文表示PDFファイル (20677KB) 
抄録本研究は,アブラムシの捕食寄生性天敵であるギフアブラバチの生物学的特性を明らかにし,本寄生蜂を活用した野菜害虫モモアカアブラムシの生物的防除技術の確立を目的として行われた。得られた研究結果の概要は,以下の通りである。モモアカブラムシを15~30℃の定温条件下で個体別に飼育し,幼虫期の生存率(誕生直後の幼虫で成虫までに発育した個体の割合),発育期間(幼虫が成虫に羽化するまでに要した期間),成虫の生涯総産子数,生存期間(成虫に羽化してから死亡するまでの期間)および個体群の増殖率を明らかした。チンゲンサイを与えて飼育したモモアカアブラムシ幼虫の生存率は90%以上と高く,発育期間は温度が高くなるにしたがって短くなった。有効積算温度の法則にもとづき,発育零点は5.6℃,有効積算温度は113.1日度となった。成虫1頭あたりの生涯総産子数と生存期間は20℃で最大となったが,個体群の増殖率を示す内的自然増加率は25℃の0.420が最も高かった。モモアカブラムシに寄生中のギフアブラバチを15~30℃の定温条件下で飼育し,アブラバチが成虫に羽化するまでの間の生存率と発育期間,雌成虫の産卵成分率(1回の産卵行動でモモアカアブラムシの体内に卵を産み付ける確率),機能の反応(1頭の雌成虫が1日あたりに寄生できるモモアカアブラムシの頭数),生涯総産卵数,生存期間を明らかにした。また,これらのデータをもとに内的自然増加率を求めて,モモアカアブラムシと比較した。ギフアブラバチの発育期間は,飼育温度が高いほど短かくなる傾向が認められた。しかし,30℃での発育期間は25℃より約1日長くなり,高温による発育遅延が認められた。発育零点は雌5.5℃,雄5.7℃,有効積算温度は雌188.6日度,雄181.0日度となった。モモアカブラムシに寄生したギフアブラバチの生存率は,飼育温度20℃と25℃で90%以上と非常に高く,15℃と30℃でも80%台だった。モモアカアブラムシに対するギフアブラバチ雌成虫の産卵成功率は84.9%だった。機能の反応では,ギフアブラバチ雌成虫1頭が1日に寄生できるモモアカアブラムシの頭数は,最大で150~200頭だった。ギフアブラバチ雌成虫は,羽化直後にモモアカアブラムシに最も多く産卵し,以後その数は減少した。1雌あたりの生涯総産卵数は平均500個余り,生存期間は12日程度だった。内的自然増加率は20℃で0.351,25℃で0.463となり,同温度でのモモアカアブラムシよりも高く,ギフアブラバチはモモアカアブラムシの生物的防除資材として有用と結論した。ギフアブラバチを秋~冬期の施設圃場内で利用することを想定して,低温短日の環境条件が本種の休眠反応に与える影響を調べた。ギフアブラバチに寄生されたモモアカアブラムシ幼虫を温度15℃・日長10L-14Dの低温短日下に置いた結果,成虫の羽化率は90%以上と高く,14L-10Dの長日条件で飼育した場合と差はなかった。さらに,マミーが形成されてから成虫が羽化するまでの期間は,長日条件より短日条件下で有意に長くなったが,その差は約1日未満であり,休眠の誘導は観察されなかった。このことから,ギフアブラバチは低温短日となる秋~冬期の施設内でも発育,増殖が可能であり,モモアカアブラムシの天敵として利用可能と推測した。チンゲンサイを置いたガラス温室やビニールハウス内にギフアブラバチを放飼して,寄生蜂によるモモアカアブラムシの抑制効果を検証した。試験は,モモアカアブラムシの初期密度やギフアブラバチの放飼間隔,放飼回数などを変えて行った。モモアカアブラムシの初期密度を3頭/株とした場合,ギフアブラバチの放飼によってアブラムシの増加が抑制された。アブラムシの初期密度が6頭/株では,アブラムシ数はアブラバチ放飼後も急増し,防除に失敗した。一方,アブラムシの初期密度を最も少ない1頭/株とした試験では,アブラバチを3日間隔で4同放飼した場合にのみアブラムシ数の増加が抑制された。これらの結果から,放飼したギフアブラバチが次世代を生産し,かつアブラバチによって増殖抑制が可能なモモアカアブラムシの密度レベルが存在することが明らかになった。また,アブラバチは複数回に分けて放飼する方が,1回にまとめて放飼するよりもアブラムシの抑制効果が高くなる傾向も認められた。なお,3番目の試験結果については,再検討が必要と考えられた。チンゲンサイを植えたビニールハウスでギフアブラバチを放飼する試験も行った。ギフアブラバチを導入したハウスでは,モモアカアブラムシの増加が抑制されたが,アブラバチを放飼しなかったハウスでは,アブラムシ数が増加した。この結果から,モモアカアブラムシに対するギフアブラバチの防除効果は,圃場スケールの空間においても実証された。アブラムシマミーの中にいるギフアブラバチは,マミーの硬い外皮によって保護されているため,輸送や圃場で放飼する際に最も扱いやすい形態をしている。また,アブラムシマミーは,アブラバチの低温保存に最も適したステージとされている。そこで,ギフアブラバチの寄生によって形成されたモモアカアブラムシマミーを4.6~12.5℃の低温下に7~21日間保存した後で室温25℃に戻し,アブラムシマミーからのアブラバチ成虫の羽化率を調べた。7.6℃,10.1℃および12.5℃の低温下に7日保存した場合,羽化率は約80%と高く,4.6℃でも60%だった。一方,低温下に14日もしくは21日保存した場合,羽化率は10%未満に低下した。成虫が羽化しなかったマミーの中には,死亡したアブラバチの蛹や成虫が観察され,休眠している生存幼虫は認められなかった。以上の結果から,ギフアブラバチが寄生中のモモアカアブラムシマミーは,温度4.6~12.5℃の低温下で最大7日間保存可能と推測した。「バンカー法」とは,天敵とその餌(寄主)昆虫,およびそれを維持するための植物を圃場内に置き,常に十分量の天敵を圃場内に維持して対象害虫を制御する技術である。増殖率の非常に高いアブラムシには,害虫の侵入発生前から天敵を圃場内に導入することができるため,効率的なアブラムシ防除が可能になる。そこで,ギフアブラバチ用のバンカー法を構築するため,野菜類を加害せず,ギフアブラバチの増殖が可能なモモアカアブラムシに代わるアブラムシを探索した。供試した6種の候補アブラムシのうち,ギフアブラバチの寄生効率が最も高かったのは,ムギヒゲナガアブラムシだった。ムギヒゲナガアブラムシに寄生したギフアブラバチは,モモアカアブラムシを与えた場合と同程度に発育できた。また,ムギヒゲナガアブラムシで継代飼育したギフアブラバチは,害虫のモモアカアブラムシに高率で寄生した。これらの結果から,ギフアブラバチの代替寄主としてムギヒゲナガアブラムシを選定し,ムギヒゲナガアブラムシを増やしたムギ類の株をギフアブラバチ用のバンカーとした。
索引語ギフアブラバチ;モモアカアブラムシ;アブラバチ;アブラムシ;成虫;発育期間;結果;ムギヒゲナガアブラムシ;放飼;寄生
引用文献数84
登録日2013年10月08日
収録データベースJASI, AGROLib

論文アクセスランキング

Copyright 2017 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター

Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat