チャの減農薬栽培に関する研究

チャの減農薬栽培に関する研究

レコードナンバー831411論文タイプ学術雑誌論文
ALIS書誌IDZZ00009236NACSIS書誌IDAN10015409
論文副題八女茶ブランド力の向上を目指して
著者名吉岡 哲也
書誌名福岡県農業総合試験場特別報告 = Special bulletin of the Fukuoka Agricultural Research Center
別誌名Special bulletin of the Fukuoka Agricultural Research Center
発行元福岡県農業総合試験場
巻号,ページ36号, p.1-75(2012-03)ISSN0913509X
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抄録福岡県内で生産される茶は「八女茶」と呼ばれている。この八女茶のブランド力をより向上するためには,チャの減化学農薬栽培体系を確立する必要がある。そこでまず,福岡県で最も防除が困難な害虫,クワシロカイガラムシPseudaulacaspis pentagona(Targioni)と,難防除害虫として知られるハダニ類の効果的な防除法の検討を行い,次に,化学合成農薬に頼らない各種病害虫防除法の検討を行い,さらに,これらの病害虫防除法を組み合わせた現地実証試験も行い,八女茶の減農薬栽培体系の確立を目指した。その主要な結果は以下のように要約される。1. 福岡県におけるクワシロカイガラムシの主要な天敵は,チビトビコバチArrhenophagus albitibiae Girault,サルメンツヤコバチPteroptrix orientalis(Silvestri),タマバエ類Dentifibula sp. であった。2. チビトビコバチ成虫に及ぼす13農薬の殺虫作用を,切り枝接触法で調査した。さらに,本処理法で24時間にわたって農薬に暴露したチビトビコバチ成虫の次世代数を調査した。成虫に対して殺虫作用の低い農薬は,メトキシフェノジド水和剤,エマメクチン安息香酸塩乳剤であった。次世代数への影響はスピノサド水和剤では認められず,メトキシフェノジド水和剤では小さかった。その他の剤は次世代数に及ぼす影響が大きく,特に,クロチアニジン水溶剤,アセタミプリド水溶剤,エマメクチン安息香酸塩乳剤では次世代成虫は認められなかった。また,各農薬の成虫生存率と次世代数には相関がみられなかった。3. クワシロカイガラムシの寄生蜂に影響が大きな薬剤の散布を制限することで天敵寄生率が上昇し,本害虫の発生程度が減少した。このことから,天敵は本害虫の主要な密度抑制要因として働いている可能性が示唆された。4. ピリプロキシフェンMC剤の冬期散布によるクワシロカイガラムシへの効果は,1回の散布で約5カ月間持続した。また,1月下旬と3月下旬に散布した場合では防除効果に差はなかった。さらに,本剤散布と散布翌年の中切りを組み合わせた場合,散布後3年間,発生程度は低密度で推移した。一方,乗用型防除機を用いた1,000L/10a散布と700L/10a散布では同等の防除効果が認められた。また,本剤散布後の雄繭発生程度は,散布翌年まで,毎年散布する慣行防除と同等かそれ以下であり,本種に対する本剤以外の防除は2年間不要であった。これらのことから,本剤は農閑期の冬季散布により労力分散が図られること,長期密度抑制により薬剤散布回数の削減が可能なことが明らかとなった。5. マシン油乳剤の一番茶萌芽前散布によるカンザワハダニTetranychus kanzawai KishidaとチャノナガサビダニAcaphylla theavagrans(Kadono)の密度抑制効果,および新芽への残留状況について検討した。マシン油乳剤のチャノナガサビダニに対する防除効果は高かった。本剤の一番茶萌芽前散布は,チャノナガサビダニとカンザワハダニの発生密度を1カ月以上抑制でき,一番茶の新芽にはほとんど残留しないことが明らかとなった。これらのことから,天然物由来のマシン油乳剤は,有機栽培におけるダニ類の基幹防除剤の一つとして利用できると考えられた。6. 茶の有機または無農薬栽培実践者に対して,被害が問題となる害虫を聞き取り調査したところ,チャノミドリヒメヨコバイEmpoasca onukii Matsudaに対する防除の必要性が高かった。そこで,防虫ネットによる防除試験を行った結果,目合い1.0mmのネットを中切りや浅刈り後,すぐに直がけすることで被害が軽減された。また,防虫ネットの直がけはチャノミドリヒメヨコバイだけでなくチャノホソガCaloptilia theivora(Walsingham),ツマグロアオカスミカメApolygus spiolae(Meyer-Duer)に対しても高い防除効果を示した。7. 勾配4度から12度の傾斜地に位置する茶園にトートリルア剤を処理し,交信攪乱法によるチャノコカクモンハマキAdoxophyes honmai Yasudaの防除効果を検討した。集団茶園の周囲に,年次により5.4mから28.8mの幅にトートリルア剤を250本/10a,その内側には150本/10aを処理すると,フェロモントラップに誘殺されるチャノコカクモンハマキ雄成虫数は無処理区より著しく減少した。処理区におけるチャノコカクモンハマキの巻葉数は無処理区より顕著に少なかった。以上の結果,トートリルア剤は傾斜地茶園においてもチャノコカクモンハマキの交信を攪乱し,防除効果が高いことが明らかとなった。8. 二番茶後の浅刈りせん枝により罹病葉を除去し,かつ,浅刈り後の萌芽が7月下旬の梅雨明け時期となるような時期にせん枝することで,秋芽における炭疽病Discula theae-sinensis(I. Miyake)Moriwaki and Toy. Satoの発生を減少させることが可能である。さらに,銅水和剤を利用して防除する場合は,三番茶芽の萌芽期から1葉期,およびその1週間後に合わせて2回散布すると炭疽病の防除効果が高いことを明らかにした。9. 黄色高圧ナトリウム灯を夜間点灯することで,チャノホソガの被害を防止できることを明らかにした。10. 本研究により,八女茶の減農薬栽培体系の有効性が実証された。この体系は,黄色高圧ナトリウム灯を利用した物理的防除,浅刈りを利用した耕種的防除,非化学合成農薬である有機JAS認定農薬の利用を組み合わせたものである。本体系は,化学合成農薬の散布成分数を年間4剤以下にすることができ,しかも,慣行栽培より高い収益性を確保することが可能である。
索引語防除効果;防除;クワシロカイガラムシ;利用;散布;八女茶;検討;チャ;剤;チャノナガサビダニ
引用文献数104
登録日2013年10月08日
収録データベースJASI, AGROLib

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