農薬の大気を経由した環境動態評価と大気放出量削減技術

農薬の大気を経由した環境動態評価と大気放出量削減技術

レコードナンバー832084論文タイプ学術雑誌論文
ALIS書誌IDZZ20024563NACSIS書誌IDAN10037751
著者名小原 裕三
書誌名農業環境技術研究所報告
別誌名Bulletin of National Institute for Agro-Environmental Sciences
Bulletin of the National Institute for Agro-Environmental Sciences
Bulletin of the National Institute of Agro-Environmental Sciences
Bull. Natl. Inst. Agro-Environ. Sci
農環研報
発行元農業環境技術研究所
巻号,ページ31号, p.131-162(2012-03)ISSN09119450
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抄録本研究では、土壌くん蒸用農薬について、日本特有の土壌くん蒸処理方法における大気への放出量を評価するため、フラックス自動測定装置を試作し評価を行った。大気放出フラックスの変動要因を解明し、得られた知見を応用した放出量削減技術の開発を行い、放出量削減技術を適用した場合における関東地域の大気中濃度の低減化の程度を評価した。また、残留性有機汚染物質(POPs)に分類される有機塩素系農薬(OCPs)の広域分布を明らかにするため、日本全域の大気中OCPs濃度を、PUFディスクを用いたパッシブエアーサンプラー(PAS)で、同時に評価することを試みた。OCPs分解物や異性体の解析により放出起源を、またバックトラジェクトリー解析で放出地域を明らかにした。農薬の大気を経由した環境動態評価と大気への放出抑制技術に関して、既存研究をレビューし、研究の意義について言及した。農薬は、農作物保護のために環境中に意図的に放出して使用する生理活性物質のため、環境中での動態やヒトを含む非標的生物に対する影響への関心が極めて高いが、大気環境中での動態に関する研究事例は、極めて少ない。臭化メチルが、オゾン層破壊物質として検疫用途と不可欠用途を除き2005年に全廃されたこと、また、OCPsの極域からの検出事例からも明らかなように、大気を経由した環境動態研究は極めて重要である。土壌くん蒸用農薬を対象にしたクローズドチャンバーとGC-FIDを応用したフラックス自動測定装置を試作し、日本特有の土壌くん蒸処理方法における大気への放出量評価を行った。放出フラックスは、大きな日内変動を有し、被覆資材下の濃度の減衰とともに減衰した。この原因として、気温、日射量等の推移により、被覆資材の温度差が日内でも50℃を超えて大きく変動することが考えられた。従来の評価が大きな不確実性を持つ要因として、測定時間分解能に起因すること、評価を実施した季節にも大きく依存していることが分かった。各種薬剤の高分子プラスチックフィルムの透過速度についての系統だった情報が、薬剤の物理化学的性質から煩雑かつ困難であることが理由で、これまで得られていないため、新規簡易評価方法(カップ法)を提案した。内容積15ml、有効面積5cm2のステンレスカップに薬剤を1~2ml注入し、カップ上端に試験フィルムを固定し、恒温装置中に設置した電子天秤により、重量損失速度を経時的に測定することで透過速度と物質移動係数を求めるものである。恒温装置内の空気はカップ内の飽和蒸気に比較して十分低くなるよう換気を行うことで、定常状態条件下での測定となるため、物質移動係数の評価も簡易化できること、再現性が高いことが利点である。また、各種薬剤とフィルムの組み合わせにおいて、物質移動係数の大きさを推算、予測するために溶解度パラメーター(SP値)を導入し、妥当な予測と至適なフィルム素材の選択が可能となった。土壌くん蒸用農薬の大気放出量削減技術として、温度上昇抑制効果の高い遮光資材を選択し、慣行の被覆資材と組み合わせて評価を行った結果、気温の高い夏季よりも気温の低い春季において、より大きな削減効果が得られた。ガスバリアー性被覆資材の利用による大気放出量削減効果を評価した結果、被覆期間中は大きな削減効果が得られるが、被覆期間の制約から土壌中での十分な分解除去が得られず、被覆資材撤去に伴って、大きな放出が生じた。二酸化チタン光触媒による分解除去機能を付与することで、放出量を1%未満に削減することが可能であった。本研究で、開発・評価を行った大気放出削減技術を適用したと仮定して、大気中1、3-ジクロロプロペン濃度の低減化を関東地域を対象に大気拡散モデル(AISTADMER)により評価した。大気監視基準2.5μg/m3に比較して、超過地域は慣行の無被覆の場合、2000年から2005年では27%から44%と増加するが、農業用ポリエチレンを用いたと仮定した場合には44%から16%まで減少し、バリアー性フィルムを用いた場合には超過地域は0%の評価結果が得られた。POPsに分類されるOCPsは、日本では1970年代初めに農薬登録が失効したが、OCPsは未だに数pg/m3から1,000pg/m3程度で大気中から検出されている。減衰の傾向は年々緩やかになっているが、日本全域の大気中OCPsの分布を同一手法で同時に試みた例は、これまでほとんど無かった。これらOCPsの大気中濃度分布を明らかにするため、2008年3月21日から5月16日の8週間、PUFディスクを用いたパッシブエアーサンプラーを、日本全域の54ヶ所に同時に設置し、評価を行った。各OCPsの大気中濃度(幾何平均:範囲pg/m3)は、CHLs(146:12-1,290)>endosulfans(70:14-269)>HCHs(46:12-405)>HCB(42:21-107)>DDTs(23:2.6-579)>drins(11:2.7-11)>HPCLs(7.6:0.44-37)>mirex(0.24:<0.082-0.88)であり、地域による特異性が認められ、アクティブエアーサンプラーを用いて行った環境省の大気モニタリングデータの結果と各OCPsの濃度レベルと順位は一致した。OCPs分解物や異性体の解析により放出起源を、またバックトラジェクトリー解析で放出地域の推定を行った。例えばDDTsの場合には、p,p'-DDT/p,p'-DDEの比から過去に日本で使用されたDDT製剤の揮散の寄与が大きいことなどが明らかとなった。このように、PASを用いた同時モニタリングは、広域の大気中濃度分布や放出起源、放出地域の評価に期待できる。
索引語評価;大気;OCPs;>経由;フラックス自動測定装置;放出;薬剤;各OCPs;農薬
引用文献数77
登録日2013年10月08日
収録データベースJASI, AGROLib

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