抄録 | 近年の東北海区のイワシ漁業について漁獲統計から吟味し、1949年から1956年の期間東北海区の全水域に亘って曳網した表層曳き稚魚網で採集されたカタクチイワシシラス約13,500尾を中心に、生態及び脊椎骨数について考察した。1)東北海区に於けるカタクチイワシ稚仔は春季(5月・6月)は常磐沿岸水域に、夏季(8月9月)は三陸沿岸及び三陸・北海道東方沖合に多く分布している。2)此の海区で採集された稚仔の体長組成は年又は月によって種々変化があるが、15mm前後のシラスが多い。亦35mm以上の成魚も沖合で若干採捕された。3)夏季(8月・9月)三陸・北海道東方沖合のgroupは体長5~10mmで、同時に卵も採集されているから、沖合で大量の発生があるものと推定される。亦これらの稚仔は親潮前線の潮境に多く分布している。4)稚仔の最多分布水温は5月・6月は17℃前後で低く、7月~9月は20℃前後で高い。5)脊椎骨数平均値では夏季(7月・8月)に採集された標本の中、143°E線を境に近海(40.10、45.21)と沖合(45.37)との間に有意な差が認められた。6)マイワシ・ウルメイワシの卵及び稚仔も小数採集された。 |