抄録 | 本種の発生についてはいまだ知られていないので、こゝに報告する。昭和30年6月6日、9日の両日函館市沖合のカレイ刺網で漁獲された本種の成熟親魚より採卵、採精し夫々数尾について乾導法人工受精を行い正常発生について実験観察を行ったが、こゝに報告する結果は第1回目の6月6日に、雌標準体長28.2cm(全体重285g)、雄24.1cm(185g)の親魚を使用した場合の結果である。飼養海水温度範囲は12.5~13.0℃で、海水比重は1.0248(15.0℃)である。其の他の実験方法は前報告の第3、4報で述べた方法と同様であり、次に観察結果を列記する。1.成熟未受精卵、受精卵はいずれも分離性の浮遊卵であった。2.卵割は一般硬骨魚のように典型的な盤状局分割を辿って、受精後約100時間で孵化した。3.成熟卵は海水によって活性化された。4.卵形は球形で、1.032~1.067mmの卵径であった。(受精後1時間内に測定)5.卵膜は薄く、透明で、厚さ6~7μで表面に微細な不規則網目構造が孵化期まで観察された。6.成熟卵では原形質を認めることは出来ないが、受精や、海水によって活性化されると卵の下極(卵が海水中に浮游の状態)に原形質の集積が起こることによって始めて(生きた材料では)原形質を認めることが出来る。この胚盤は淡黄色を呈し、卵黄は無色透明であった。7.卵は油球を含まない。8.2細胞期から16細胞期までの卵割間の時間は約1時間であった。9.孵化稚魚は卵膜を破って頭部より孵化し浮遊するも、卵膜は直ちに沈下する。10.孵化後10日で完全に卵黄を吸収し、後稚魚期となった。11.孵化後12日まで飼育し観察し得た。 |