トリエン脂肪酸低減シクラメンにおける高温耐性獲得メカニズムに関する研究
レコードナンバー | 852122 | 論文タイプ | 学術雑誌論文 |
ALIS書誌ID | ZZ00009236 | NACSIS書誌ID | AN10015409 |
著者名 | 甲斐 浩臣 |
書誌名 | 福岡県農業総合試験場特別報告 = Special bulletin of the Fukuoka Agricultural Research Center |
別誌名 | Special bulletin of the Fukuoka Agricultural Research Center |
発行元 | 福岡県農業総合試験場 |
巻号,ページ | 39号, p.1-26(2013-03) | ISSN | 0913509X |
全文表示 | PDFファイル (4027KB) |
抄録 | 植物の細胞膜を構成するトリエン脂肪酸の含有量を低下させることで、植物体に高温耐性が付与できることが報告されている。しかしながら、そのトリエン脂肪酸含有量の低下と高温耐性の付与に関するメカニズムは明らかになっていなかった。一方、トリエン脂肪酸は、過酸化反応によりα,β-不飽和カルボニル群を含む細胞毒性を有する物質を発生させることが報告されていた。そこで、今後の高温耐性育種に関する研究に資することを目的に、形質転換技術を用いてトリエン脂肪酸含有量を低下させた高温耐性シクラメンを作出し、トリエン脂肪酸含有量の低下と細胞毒性を有するトリエン脂肪酸由来の過酸化物質との関係を調査した。数多く生成するトリエン脂肪酸の過酸化物質の中でも細胞毒性が高いと報告されるアクロレイン(ACR)、メチルビニルケトン(MVK)、(E)-2-ヘキセナール、4-ヒドロキシ-2-ノネナール(HNE)、マロンジアルデヒド(MDA)について、高温条件下での栽培種(WT、以下同様)と高温耐性シクラメンにおける葉内濃度の発生消長を分析した。その結果、WTの葉におけるACRとMVKの葉内濃度は、高温障害の発現程度と同様に上昇した。一方、高温耐性シクラメンについては、高温条件下でも高温障害の発生がほとんど認められず、ACRとMVKの葉内濃度も上昇しなかった。さらに、WTの切除葉に対して、高温条件下においてWTの葉内で蓄積された濃度になるまで外部からACR及びMVKをそれぞれ浸透させる浸漬実験を行った結果、高温条件下で発生した高温障害と同様の萎れや褐変といった障害が葉に発生した。これらの結果から、通常の植物体の葉におけるトリエン脂肪酸は、高温条件下で酵素的あるいは非酵素的に分解及び代謝され、ACRやMVKといった細胞毒性を有するトリエン脂肪酸代謝産物を生成することで、結果的に葉における萎れや褐変といった高温障害が発生することが明らかとなった。一方、トリエン脂肪酸含有量を低下させた形質転換植物においては、ACRやMVKの基質となるトリエン脂肪酸が微量であるため、高温条件下においても細胞毒性を有するトリエン脂肪酸代謝産物の生成が抑制され、結果的に葉における高温障害の発生を軽減若しくは遅延させることが明らかになった。このようなトリエン脂肪酸を低下させた植物体は、デサチュラーゼ酵素をコードするFAD7を突然変異育種法により不活化することで作出できる可能性が高い。その上、ACRやMVK等の細胞毒性を有するトリエン脂肪酸由来の物質について分析・評価を行うことで、効果的に高温耐性植物を育成できる可能性が示唆された。 |
索引語 | トリエン脂肪酸;発生;低下;細胞毒性;高温条件下;葉;高温障害;MVK;WT;萎れ |
引用文献数 | 38 |
登録日 | 2014年01月30日 |
収録データベース | JASI, AGROLib |