木材腐朽性担子菌類と菌食性昆虫の生物間相互作用

木材腐朽性担子菌類と菌食性昆虫の生物間相互作用

レコードナンバー870055論文タイプ学術雑誌論文
ALIS書誌IDZZ00015063NACSIS書誌IDAN00193852
論文副題胞子分散における昆虫の役割
著者名山下 聡
書誌名日本生態學會誌
別誌名日生態会誌
Jpn. j. ecol
Japanese journal of ecology
日本生態学会誌
発行元日本生態学会暫定事務局
巻号,ページ63巻・ 3号, p.327-340(2013-11)ISSN00215007
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抄録枯死木は森林中に大量に存在するものの、難分解物質から構成され、多くの動物にとって餌として利用しにくい資源である。菌類はこれを分解することで様々な動物に利用可能な形態に変換している。担子菌類の有性胞子は子実体で形成され、風により分散すると考えられている。その一方で一部の担子菌類が形成する大型の子実体(キノコ、サルノコシカケ)は様々な昆虫により摂食されている。昆虫が胞子分散に寄与している可能性もあるが、十分に検討されていない。本総説では、風による胞子分散と木材腐朽性の大型担子菌類の資源利用様式についてまとめたうえで、これらの菌類と昆虫の対応関係、昆虫の利用頻度、昆虫により摂食される胞子の数とその生存率、昆虫の移動距離と方向などに関する知見を整理した。そして風による胞子分散と動物による胞子分散の有効性を検討し比較した。大型担子菌類では、種によっては1日に1000万個以上の胞子が放出されている。一つの子実体から放出される胞子のうち大部分は子実体の近傍に落下するが、100kmを超える距離を移動する胞子もある。木材腐朽菌の定着には、1日当たり4700個/m2程度の胞子が少なくとも必要と考えられている。子実体の周辺5km程度では、この密度の胞子が確保されているようである。多孔菌類では鞘翅目昆虫が、ハラタケ類では双翅目が優占し、高頻度で子実体を訪問している。昆虫は約1万~10万個/匹の胞子を消化管に取り込みうる。昆虫に摂食された胞子は、完全に発芽能力を失う場合から維持される場合まで、昆虫の種類によって様々である。鞘翅目は1日に10数km、双翅目は数kmを移動しうるが、風によって長距離を移動する場合もある。菌食性昆虫は菌の匂いをたよりに子実体間を移動すると考えられている。昆虫1個体内に取り込まれる胞子の数は、発芽能力が維持される場合、菌が定着するのに十分な量であり、昆虫による胞子分散の可能性は必ずしも否定されない。その一方で、運搬される場所は菌の新たな定着には不適当な場所である可能性が残されていることと、風による分散のみで空間分布様式が説明できている事を考慮すると、現時点では、昆虫による分散を強く支持する理由はない。昆虫による胞子分散の可能性を示すためには、昆虫の行動パターンを含め、胞子が運搬される場所と量を明らかにしていく事が必要であろう。そのうえで風散布と動物散布の相対的重要性を示していくことが必要である。
索引語胞子;昆虫;胞子分散;子実体;菌;風;移動;可能性;分散;量
引用文献数134
登録日2014年06月11日
収録データベースJASI, AGROLib

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