イネ萎縮ウイルスは自ら形成したチューブを通って近隣昆虫細胞に移行・感染する

イネ萎縮ウイルスは自ら形成したチューブを通って近隣昆虫細胞に移行・感染する

タイトルイネ萎縮ウイルスは自ら形成したチューブを通って近隣昆虫細胞に移行・感染する
要約 イネ萎縮ウイルス由来のPns10タンパク質は径約85 nmのチューブを形成し、ウイルスが近隣昆虫細胞へ移行するのに利用される。媒介昆虫のアクチンフィラメントは本チューブの構築をサポートし、昆虫細胞間のウイルス移行に必須な宿主因子である。
キーワードイネ萎縮ウイルス、媒介昆虫、培養細胞、細胞間移行、宿主因子
担当機関(独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター 昆虫等媒介病害研究チーム
連絡先029-838-8932 / toomura@affrc.go.jp / toomura@affrc.go.jp
区分(部会名)共通基盤
分類研究、普及
背景・ねらい 農業上甚大な被害を引きおこす植物ウイルスの大部分は、昆虫等の微小生物によって媒介される。すなわち、昆虫等による媒介の阻害手法があれば、大部分の植物ウイルス病を抑止することが可能であると言っても過言ではない。阻害手法の開発にはウイルスと媒介昆虫との相互作用に関する分子レベルの情報が必要である。そこで、イネ萎縮ウイルスとその媒介昆虫であるツマグロヨコバイの培養細胞を用いて、感染細胞でウイルス粒子が構築された後の細胞間移行における分子レベルの解析を行った。
成果の内容・特徴
  1. イネ萎縮ウイルスは分節ゲノムS10がコードする非構造タンパク質Pns10からなる径約85 nmのチューブを構築し、その中に配列されたウイルス粒子とともに本チューブが近隣健全細胞に結合、貫入するのに伴い、移行・感染する(図1)。
  2. ウイルスの中和抗体存在下で、細胞外に存在するウイルスによる感染は阻止されるが、本チューブが貫入している近隣細胞は感染する。
  3. 昆虫細胞の骨格を形成するアクチンはPns10タンパク質と結合し、Pns10チューブは媒介昆虫細胞のアクチンフィラメントに沿って伸長する(図2)。
  4. アクチン合成阻害剤の使用により、Pns10タンパク質の伸長と近隣細胞への感染が阻害される。
  5. 媒介昆虫のアクチンフィラメントは本チューブの構築をサポートし、昆虫細胞間のウイルス移行に必要な昆虫宿主因子である。
成果の活用面・留意点
  1. 動物細胞において、ウイルスのタンパク質がチューブを形成し、それを経由して近隣細胞にウイルス粒子が移行するという現象は国際的にも初めての報告である。本知見は、イネ萎縮ウイルスと同様に媒介昆虫で増殖する植物ウイルスのみならず、動物ウイルスの研究発展にも寄与するものと想定される。
具体的データ
図1 . 媒介昆虫ツマグロヨコバイの感染細胞から伸張するPns10 チューブ中のイネ萎縮ウイルス粒子(黒点を中心にした径約70 nm の球状体) 。電子顕微鏡による観察。
図2.中和抗体存在下における、イネ萎縮ウイルス感染細胞から伸張するPns10 チューブ、アクチンフィラメント及びウイルスの共在。Pns10:イネ萎縮ウイルスがコードする非構造タンパク質。ツマグロヨコバイ細胞をウイルス粒子、アクチン、Pns10それぞれに対する抗体で3重染色後、共焦点レーザー顕微鏡によって観察。接種72時間後。
予算区分基盤研究費
研究期間2006~2006
研究担当者Wei Taiyun (海外特別研究員)、一木珠樹 、清水巧(特別研究員)、大村敏博、萩原恭二(特別研究員)
発表論文Wei, T., Kikuchi, A., Moriyasu, Y. et al. (2006). J.Virol. 80, 8593-8602.
発行年度2006
収録データベース研究成果情報

研究成果情報アクセスランキング

Copyright 2017 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター

Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat