スタイナーネマ クシダイの液体培地による大量増殖

スタイナーネマ クシダイの液体培地による大量増殖

タイトルスタイナーネマ クシダイの液体培地による大量増殖
要約スタイナーネマ クシダイはコガネムシ類幼虫に対して強い殺虫力を示す昆虫病原性線虫である。この線虫の液体培地による大量増殖法と増殖線虫の低温保存法を開発した。
担当機関森林総合研究所
区分(部会名)森林
背景・ねらい1984年静岡県浜北市の樹木苗畑土壌から新種の昆虫病原性線虫 スタイナーネマ クシダイ(Steinernema kushidai)が発見された。本線虫は、スギ・ヒノキなどの造林用苗木やサツマイモ・ピーナッツ・茶などの農作物やゴルフ場の芝生などに大きな被害を与えているコガネムシ類幼虫に対して強い殺虫力を示し、しかも土壌中で長期間生存することから、生物農薬としての利用が強く期待されている。そこで、本線虫の液体培地による大量増殖法と増殖線虫の低温保存法を開発した。
成果の内容・特徴本線虫は口や肛門や皮膚を突き抜けて昆虫体内に侵入する。その昆虫体内では、本線虫の保有している共生細菌(Xenorhabdus japonicus)が繁殖して、昆虫は敗血症を起こして死亡する(写真1、2)。本線虫はこの共生細菌や死亡した昆虫の組織を食べて成虫になり(写真3)、交尾・産卵して増殖する。死亡昆虫体内に食べものが不足してくると、本線虫は感染態幼虫という一形態に分化して、昆虫体外へ脱出する(写真4)。この感染態幼虫は土壌中では体を丸めた状態で潜んでおり(写真5)、別の昆虫への新たな感染の機会を待っている。

本線虫は従来の昆虫病原性線虫用の人工培地では増殖しなかった。そこで新たに可溶性澱粉0.6%・グルコース1.0%・ラード3.0%・ぺプトン1.5%・酵母抽出物1.5%・蒸留水92.4%の液体培地を開発した。このうち可溶性澱粉とグルコースを安価なデキストリンに、ラードを操作の容易な大豆油とラードの混合物やイカ肝油に、酵母抽出物を安価な乾燥酵母にそれぞれ置き換えることができた。高圧滅菌した液体培地7Lに、本線虫の共生細菌と感染態幼虫50万頭を接種し、培地へ空気を注入して溶存酸素量を0.5~3ppmに保ち、25℃で攪拌培養したところ、30日後に約3億頭の感染態幼虫が得られた(写真6、7)。このようにして増殖させた線虫を実際に利用するためには長期保存技術が欠かせない。この点については、25℃で増殖させた感染態幼虫を一旦中間温度(10~15℃)に10日間以上保つと、体内に糖の一種トレハロースが合成されて耐寒性が増し(図1)、5℃での長期保存が可能になるいうことが明らかになった。

なお、本研究の一部は「昆虫寄生性線虫の増殖用培地」として特許出願されている。
具体的データ
写真1
写真2
写真3
写真4
写真5
写真6、写真7(右下)
図1
研究担当者小倉 信夫(森林生物部 線虫研究室)
発行年度1999
収録データベース研究成果情報

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