ランドモザイク解析により森林の分断度合を調べる

ランドモザイク解析により森林の分断度合を調べる

タイトルランドモザイク解析により森林の分断度合を調べる
要約茨城県七会村ほか1地区の植生図を作成してGIS化し、森林の分断度指標を定量的に求めた。その結果、人為インパクトにより天然林や、人工林がどのように分断化されているかを定量的に評価することが可能となった。
担当機関(独)森林総合研究所
区分(部会名)森林
背景・ねらい1992年6月の国連環境開発会議以降、持続的な森林経営のための基準・指標作成が世界的に活発化しているが、我が国も参加しており温帯の森林を対象としているモントリオール・プロセスでは、基準1「生物多様性の保全」の一つの指標として「森林タイプの分断度合」を挙げている。

ところで、多くの動植物はその生息環境を森林タイプに依存しているが、近年の急激な土地利用改変などにより本来の森林が分断化され、それによる生態系の劣化が懸念されている。このため、分断度合に関するモニタリングの実施が求められているものの、早急な対応は難しい上に、森林簿や統計表だけからこの種の情報を収集するにも多大な困難が伴う。そこで筆者らは、一定地域を限定した上で、ランドモザイク解析法を用いた分断度合の定量化に取り組んだ。
成果の内容・特徴対象地域は茨城県西茨城郡七会村および筑波山系加波山周辺の面積各2,400haである。前者は茨城県北西部に位置し、全面積の約83%を山林が占める農村地域、後者は筑波山系北部に位置し、小規模ながら山頂付近にほぼ自然状態のブナ林、アカガシ林を残す山岳地域である。解析方法としては、1992年および1993年撮影の空中写真判読から現存植生図を作成し、GISに入力後、森林の分断度合を算出することとした。なお、ここでの算出に用いた指標とは、モントリオール・プロセスのテクニカルノートに記されている植生のパッチ数、パッチサイズ、および植生パッチの総エッジ数に占める他の森林植生と隣接するエッジの割合の3通りのものである(パッチ:特定タイプの植生がある程度のまとまりをもって存在する領域、エッジ:パッチの境界領域)。

その結果、加波山では20ha以上の植生パッチが森林面積の56%、5ha未満の植生パッチが21%だったのに対し、七会村ではそれぞれ36%、36%であり、加波山と比べて小面積パッチの全森林面積に占める割合が高かった。また、パッチの数でみても、七会村では1ha未満のパッチが全体の53%を占めており、加波山より小面積森林が多数分布していることが明らかであった(図1)。

植生タイプ別にみると(図2)、七会村の落葉広葉樹林では20ha以上のパッチが全面積の約半分を占め、この地域の落葉広葉樹林では分断化は進んでいないことが明らかであった。一方、加波山ではアカマツ林、落葉広葉樹林で20ha以上のパッチがそれぞれ全パッチ面積の85%、50%を占めていた。

植生パッチの総エッジ数に占める他の森林植生と隣接するエッジの割合は、七会村、加波山でそれぞれ0.76、0.88と両地域とも80%前後の値であり、当指標から判断する限り、森林としての分断度合は低レベルにあると推察した。

七会村で落葉広葉樹林が維持されてきた理由として、古くは薪炭林生産、近年はシイタケ原木生産という確かな目的が存在していたことにあると考察した。加波山でも落葉広葉樹林にはシイタケ原木生産、アカマツ林には落葉落枝採取やシイタケほだ木の伏せ込み場という役割を与えていたが、それと同時に、スギ・ヒノキの造林不適地であったこともこれらの森林タイプが大面積に維持されてきた理由であると考察した。

上記の手法を用いることにより、既存情報からでは計り得なかった森林分断度合の定量化が実現し、地域森林計画策定に向けた科学的数値の提供が可能となった。
具体的データ
図1
図2
研究担当者宮本 麻子(森林管理研究領域 環境計画研究室)、島田 和則(気象環境研究領域 気象害・防災林研究室)
発行年度2001
収録データベース研究成果情報

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