熱帯降雨林における生物多様性の高さ −カミキリムシ−

熱帯降雨林における生物多様性の高さ −カミキリムシ−

タイトル熱帯降雨林における生物多様性の高さ −カミキリムシ−
要約熱帯降雨林は生物多様性が高いといわれている。本文はインドネシアの狭い調査地のカミキリムシ種数が世界各地の広範な国、地域と比較しても遜色ないことを示し、熱帯降雨林の生物多様性の高さを具体的に紹介する。
担当機関(独)森林総合研究所
区分(部会名)森林
背景・ねらい熱帯降雨林は一般に生物多様性が高いといわれている。しかし、その具体的データが十分に示されているとはいえない。筆者らは最近5年間、インドネシアの東カリマンタンと西ジャワで森林昆虫の代表であるカミキリムシの捕獲調査を行い、インドネシア各地のインベントリーを作成した。その結果、インドネシアの熱帯降雨林は限られた狭い地域であっても世界各地の広範な国・地域と比較しても遜色ないくらいに豊富な種類のカミキリムシが生息しており、多様性のきわめて高いことが明らかとなった。本文ではインドネシア各地のカミキリムシ相の調査方法と結果および他国、他地域とのカミキリムシ種類数の比較から、その生物多様性の高さについて紹介する。
成果の内容・特徴インドネシア東カリマンタン州サマリンダにあるムラワルマン大学のブキット・スハルト教育実習林は赤道直下でカリマンタン(ボルネオ)島の東部に位置し、大半が標高100m以下の低地林で面積は約5,000haである。この実習林の約1,000haの調査地で、筆者らは1997年12月末より2001年4月までカミキリムシ相の調査を行った。また、この実習林より直線距離にして約30km離れたブキット・バンキライの300haの天然林で、1999年3月より2001年2月まで同様の調査を実行した。さらにジャワ島西部グヌン・ハリムーン国立公園のチカニキにある調査地2haの天然林で2001年3月と2002年4月に調査を行い、同時に1997年より当調査地で採集され、チビノン動物博物館に所蔵されていたカミキリムシ類を全て調べた。

調査方法はマレーズトラップ(写真1)、吊り下げ式トラップ、ライトトラップなどの一般的なトラップを使用した。この他、ベートトラップとして多くの樹種の生枝を切り取り、束ねて林内の樹幹に吊すことによって、それを食し、また産卵に来るカミキリムシを捕獲した。使用した樹種の中ではクワ科でジャックフルーツとして知られているArtocarpus sp.が最も有効であったため、Artocarpusトラップ(写真2)として多用した。トラップの大半は地上部に設置したが、これら3林分には生態観測用のタワーないしはキャノピー・ブリッジがあるので、ここにもトラップを設置した。

この結果、ブキット・スハルト実習林1,000haで733種、ブキット・バンキライ天然林300haで513種、このカリマンタン低地の2林分を併せると850種、ジャワ島西部のグヌン・ハリムーン2ha(0.02km2)で128種のカミキリムシが確認された。そして、これらの種にはカリマンタンの代表的なカミキリであるクシヒゲミヤマカミキリCyriopalus wallacei Pascoe(写真3)、Pachyteria borneensis Podany(写真4)のほか、100種以上の新種が含まれている。

この狭い地域で捕獲された種数の多さを示すために他国・地域と比較してみると、メキシコを除く北米大陸 (2,196.2万km2):約950種、旧ソビエト連邦(2,240.2万km2):383種、フランス(55.2万km2):235種、スカンデイナビア(111.1万km2):121種、オーストラリア(774万km2):1,500種、中国(959万km2):2,200種、日本全土(37.8万km2):750種などとなる。ちなみに森林総合研究所が総合的に調査を行っている北茨城市の小川地区350ha(3.5km2)では137種のカミキリムシが記録されている(図1)。この数字だけを単純に比較してもインドネシア熱帯降雨林がいかに多様な種を有し、生物多様性が高いかを理解できるというものである。

なお、本研究はJICA「熱帯降雨林研究計画」とその後のアフターケアーおよび「生物多様性プロジェクト」におけるデータを解析したものである。
具体的データ
写真1
写真2
写真3
写真4
図1
研究担当者槙原 寛(海外研究領域 熱帯荒廃林チーム長)、Woro A. Noerdjito(インドネシア チビノン動物博物館)、Sugiarto(愛媛大学 (元 ムラワルマン大学))
発行年度2002
収録データベース研究成果情報

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