斜面崩壊の到達範囲を予測する

斜面崩壊の到達範囲を予測する

タイトル斜面崩壊の到達範囲を予測する
要約斜面崩壊の到達危険範囲を予測するために、崩壊現象を粒状体の集合の運動として再現する数値シミュレーションモデルを開発するとともに、実規模の崩壊実験を行ってモデルの妥当性を検証した。
担当機関(独)森林総合研究所
区分(部会名)森林
背景・ねらい日本は多雨で地形も急峻なことから自然災害が発生しやすいため、世界全体の災害被害額に占める我が国の割合は過去30年間で16%と非常に高く、また毎年100名弱(地震被害除く)の尊い人命が失われ続けています。さらに、近年における都市域の山間地への拡大と過疎地域における高齢化は、特に土砂災害に対する潜在的危険度を増加させています。そこで今後は、災害危険区域と安全区域の判別を行って、建築規制・移転および費用対効果を勘案した防災施設の配置計画、そして地域住民を主体とした情報伝達網を構築するなど、情報公開に基づいた地域一体型の防災システムの構築が望まれています。
本研究では、斜面崩壊の運動を再現できる数値シミュレーションモデルの開発を行って、信頼のおける土砂災害危険範囲情報を提供することで、安全な国土創造の一翼を担うことを目的としています。
成果の内容・特徴

粒状体運動シミュレーションモデルの構築

斜面が崩壊する現象を物理的に正しく再現するためには、崩壊土砂が土粒子の集合体であることを直接的に表現したモデルの構築が不可欠です。そこで近年そのコンセプトが提示され、多方面で有用性が実証されつつある粒状体運動シミュレーション手法を開発するとともに、実際規模の崩壊実験を行ってモデルの正しさを検証しました。
粒状体モデルの特徴は、コンピュータの中に図1に示すような粒子を多数発生させて、その集合体で崩壊土砂の運動を再現するものです。粒子は互いに衝突やすべりを繰り返しながら運動量を伝達し、運動エネルギーを消耗してゆきます。解析対象の大きさや材料の性質によっては数十万個の粒子を用いる場合もあり、近年のコンピュータ能力の向上なくして適用し得ない手法です。

斜面崩壊実験

一方、崩壊実験を行った斜面は、斜面長6m、傾斜30°で、斜面上および連続する平坦面上に花崗岩板を敷き並べました。そして、一辺が10cmの立方体状花崗岩ブロックを、最大1000個用いて、斜面上端より一気に落下させて崩壊を発生させました。実験後、各ブロックの堆積位置を測り、最も遠方に到達した先端のブロックの到達距離と全ブロックの重心に関する到達距離を求めて、崩壊時の運動エネルギーの消耗の目安としました(図2)。

モデルと実験結果との対比

写真1に実験時の様子を示します。実際の崩壊実験とシミュレーションを比べたところ、ブロックの堆積した様子および先端の到達距離ともシミュレーションによって良く再現できることがわかりました(図3)。崩壊するブロックの数と到達距離との関係について、シミュレーションの結果と実験の結果とを示しました(図4)。ブロック数が多くなると先端はより遠くまで行きますが、堆積時の重心位置はかえって短くなることがわかります。実験のビデオ画像の解析とシミュレーションを行って検討したところ、ブロック数が増えるとともにブロック同士の衝突頻度が増えることがその原因であることがわかりました。すなわち斜面崩壊の運動は、崩壊土砂が粒状体の集合体であることに強く支配されるものであり、このシミュレーション手法が到達距離を予測するのに有効であることが明らかになりました。
今後は、ここで開発されたシミュレーションモデルが、崩壊土砂が到達する危険範囲の推定や災害防止施設の配置計画に有効活用されることが期待されます。
具体的データ
図1
図2
写真1
図3
図4
研究担当者大倉 陽一(水土保全研究領域 治山研究室)、北原 曜(信州大学農学部)、川浪 亜紀子(林野庁治山課)
発行年度2003
収録データベース研究成果情報

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