かたちと遺伝子に残るスギカミキリがたどって来た道

かたちと遺伝子に残るスギカミキリがたどって来た道

タイトルかたちと遺伝子に残るスギカミキリがたどって来た道
要約スギやヒノキの材質劣化害虫であるスギカミキリの形と遺伝子を地域間で比較した。その結果、日本海側と太平洋側では遺伝的に異なる集団が存在することが判明した。
担当機関(独)森林総合研究所
区分(部会名)森林
背景・ねらいスギカミキリは、スギやヒノキの材質劣化害虫です。1頭の幼虫が多量の内樹皮を食害するので、重大な林業被害をもたらします。スギカミキリとスギやヒノキはともに日本に昔からいる生き物で、お互いに影響を与えあいながら進化してきたと考えられます。各被害地におけるスギカミキリの生態を理解し、被害地のあいだでスギカミキリの増え方や数の違いがなぜ生じているのかを知るためには、スギカミキリの進化史を把握することも大事です。
スギには多くの地域性品種があり、大きくはオモテスギ(太平洋側)とウラスギ(日本海側)とに分けられます。スギとの対応を考えると、スギカミキリも地域間で異なるさまざまな性質をもつ可能性があります。スギカミキリの種内の変異を形と遺伝子から調べ、共通の遺伝的基盤を持つ集団をとりまとめました。また、変異の地理的なまとまりから各地のスギカミキリのたどってきた歴史を推定しました。
成果の内容・特徴

形のちがい

スギカミキリの形の変異を数値で表すために、岩手から高知までの10地点でつかまえられたスギカミキリの体の10ヵ所を測定し、多変量解析をしました(図1)。その結果、太平洋岸の個体群(高知、愛媛、千葉、茨城)と、若狭湾付近の個体群(福井、京都)の間で形は大きく異なり、中国地方(島根、岡山、鳥取)と岩手個体群はその中間的な形を持つことが判明しました(図2、写真1)。若狭湾沿岸と太平洋側でのスギカミキリの形の違いは、なぜ生じたのでしょうか?氷河期、スギは太平洋と日本海の沿岸地域にほそぼそと生育しているだけでした。そのため、当時スギカミキリも太平洋側と日本海側では行き来が無く、隔たっているうちに地域間で違う形をもつようになったのだと考えられます。現在のようにスギが広く植えられるようになっても、スギカミキリの地域ごとの変異はだいたい保たれているようです。

遺伝子のちがい

形の異なっていた岩手、福井、島根、愛媛のスギカミキリ52個体の遺伝子解析をしました。10のDNAの型が検出されました。DNAの型は大きく2系統にまとめられることがわかり、それぞれ太平洋側と日本海側にいたスギカミキリの子孫なのだと考えられました(図3)。岩手にはその両方がおり、それぞれ別の由来をもつ集団が混合したと思われます。

このように、スギカミキリには地域ごとに形の異なる集団があり、遺伝子解析から形の違いは歴史の違いを反映していることが確かめられました。これからより多くの地域でスギカミキリの遺伝的な特徴を明らかにすることで、あらたに発生するスギカミキリの被害がどこからきたのかを突き止められるでしょう。遺伝的変異と被害発生の仕方の違いとの関連がわかると、新しい防除対策の開発につながる可能性があります。

詳しくは:Shoda, E., Kubota, K. & Makihara, H. (2003)Applied Entomology and Zoology 38: 369‐377. をご覧下さい。
具体的データ
写真1
図1
図2
図3
研究担当者加賀谷 悦子(森林昆虫研究領域 昆虫生態研究室)
発行年度2003
収録データベース研究成果情報

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