熱帯の極限的荒廃地を緑にする

熱帯の極限的荒廃地を緑にする

タイトル熱帯の極限的荒廃地を緑にする
要約自然にまかせた回復が難しい熱帯荒廃地での森林修復を行うために、植栽地の厳しい環境に対して、生理学的に順応した新しい葉を出せる樹種(タイプ)が有望であることを示しました。
担当機関(独)森林総合研究所
区分(部会名)森林
背景・ねらい熱帯地域では森林伐採はじめ様々な人為的要因によって、その面積が減少し続けています。利用された後の森林は、ゆっくりともとの状態へと回復します。しかし、あまりにひどい被害を受けた時には、その後の森林の回復が難しくなることもあります。そのような場合は、土地の改良や木を植えることで回復を促す必要があります。 しかし、これまで行われた熱帯地域の植林は、主に良質な木材がとれる木や、成長がはやくパルプや合板に用いられる木を対象としており、「極限的に荒廃地した森林を回復させる」という目的での植林は依然として少ない状況にあります。そこでこの研究では、森林が寸断され、しかも自然にまかせた回復が難しい場所において、鳥や動物が果実を好む木(触媒効果木とよんでいます)を中心に植栽することで、森林の回復を鳥や動物による種子の運び込みによって手伝ってもらおう(このことを触媒効果とよんでいます)という試みをしています。
成果の内容・特徴

どのような木を植えればいいのか?

熱帯地域で植栽が必要な場所は、強い直射光と、高温にさらされる裸地で、土壌の状態が悪いため水を保つ能力が低く、雨が降ってもすぐに乾燥するなど、植物が生育するには厳しい環境のところです。このため、植栽する前にどの木がこのような厳しい環境に耐えうるかを調べました。この研究では植物が生きていくために必要な「光合成」と「水利用」と「強い光に耐えうるか」という生理的な視点と、鳥や動物が果実を好むかどうかという視点から、「厳しい環境にも対応できる木」と「厳しい環境のもとではやや生育に影響がある木」から触媒効果木を選びました(図1)。

実際に植えてみる

選んだ木を実際に植栽し、苗の生長や、苗の生理状態を継続的に測定しました(図2)。その結果、(1)厳しい環境にも対応でき、植栽後の環境に順応した新しい葉をだすタイプ(Callerya atropurpurea)、(2)葉の寿命が短く新しい環境に対応できる葉をすぐにだすことができるが、乾燥に弱いタイプ(Canarium pilosum)、(3)植栽した環境に順応できない、もしくは順応するには時間がかかるタイプ(Cynometra cauliflora)など、いくつかのタイプに分かれました。「厳しい環境にも対応できる」と予想された(1)のタイプの樹種は、植栽後も光合成速度は増加し、高い成長量を示しました。それに対し、「乾燥に弱い」と考えられた(2)のタイプの樹種は、降水量の少ない時期に光合成速度は減少し、その間は成長量も減少しました(図3)。これらのことから、木の生理的特性をあらかじめ調べておけば、多大な経費と長期間要する植林試験の結果を待たなくとも、植栽した木の成長を予測することも不可能ではありません。
しかしながら、植栽した木が実際に果実をつけ、鳥や動物が来て種子を運んでくれるのか、またそれに伴って、自然の森からも種子を運んでくれるかについては、今後、根気よく開花結実を待って調べていく必要があります(図4、5)。

本研究は、地球環境研究総合推進費「荒廃熱帯林のランドスケープレベルでのリハビリテーションに関する研究」による成果です。
具体的データ
図1
図2
図3
図4
図5
研究担当者松本 陽介(海外研究領域 領域長)、米田 令仁(日本学術振興会 特別研究員)、丸山 温(北海道支所 植物土壌系研究グループ)、北尾 光俊(北海道支所 植物土壌系研究グループ)
発行年度2004
収録データベース研究成果情報

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