絶滅危惧種ヤツガタケトウヒの地理的分布と遺伝的多様性

絶滅危惧種ヤツガタケトウヒの地理的分布と遺伝的多様性

タイトル絶滅危惧種ヤツガタケトウヒの地理的分布と遺伝的多様性
要約八ヶ岳周辺に生息し絶滅危惧植物であるヤツガタケトウヒは、12の生育地で約1000個体の母樹があり、現在の保存林だけでは遺伝的な特性を保てないことが解りました。
担当機関(独)森林総合研究所
区分(部会名)森林
背景・ねらいヤツガタケトウヒ(写真1)はエゾマツやアカエゾマツなどと同じマツ科トウヒ属に分類される樹木ですが、生育地(写真2)と個体数が限られ、環境省レッドデータブックで絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。約2万年前の最終氷期には東日本に広く分布していたことが化石資料などで知られていますが、現代では1911年に長野県八ヶ岳西部で発見された後、さらに南アルプスの一部の生育地が知られているのみでした。そこで生育地の現状を調査するとともに、集団がもつ遺伝的な多様性について調べてみました。
成果の内容・特徴

ヤツガタケトウヒの現状

ヤツガタケトウヒの生育地については、新たな発見も含めて12カ所で確認されました(図1)。母樹(胸高直径20cm以上)の総数は1,000本程度と推測されましたが、多くの生育地で樹高1mに満たない若木はあまり見られず、次世代の更新の成否は不明です。

遺伝的多様性を調べると

次に、古くから知られていた八ヶ岳西部の2集団(カラマツ沢とフウキ沢)と南アルプスの天主岩の集団、および新しく発見された南アルプス大平の集団について、酵素多型(アロザイム)を利用して遺伝的多様性を調査しました(表1)。遺伝的多様性の量を示す平均ヘテロ接合度(He)の値は、カラマツ沢以外の3集団では比較的大きく(0.185~0.196)、これは個体数の非常に多いスギやヒノキで調べられた値とほぼ同程度であり、集団の中に様々な遺伝的性質の個体が含まれていることを示します。一方、カラマツ沢集団のHeは明らかに小さい(0.136)もので、集団の中の個体がやや均質である傾向を示します。

遺伝資源保存林だけでは不十分

カラマツ沢の集団は樹高20mを超える堂々とした大木が林立して遺伝資源保存林として重要視されていますが、この集団がもつ遺伝的な多様性は見た目よりも少ないのです。したがってヤツガタケトウヒを健全に保全するためには、このカラマツ沢の集団だけではなく、さらに出来るだけ多くの生育地における保全が重要であると考えられました。今回の調査結果に基づいて大平や天主岩のヤツガタケトウヒについては保護林の指定や種子を採取しての増殖などが国や県によって検討されています。

詳しくは:Katsuki, T., et al. (2004) Acta. Phytotax. Geobot. 55:19-28をご覧下さい。
具体的データ
写真1
写真2
図1
表1
研究担当者勝木 俊雄(多摩森林科学園 教育的資源研究グループ)、吉丸 博志(森林遺伝研究領域 生態遺伝研究室)、島田 健一(森林遺伝研究領域 生態遺伝研究室)
発行年度2004
収録データベース研究成果情報

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