被食防御物質*タンニンに富むドングリをアカネズミが利用できるわけ

被食防御物質<sup>*</sup>タンニンに富むドングリをアカネズミが利用できるわけ

タイトル被食防御物質*タンニンに富むドングリをアカネズミが利用できるわけ
要約ドングリには、動物による被食を防御する物質タンニンが高濃度で含まれています。ドングリを主要な餌とするアカネズミが、唾液と腸内細菌の働きによって、タンニンの有害な影響を克服してドングリを利用しているメカニズムを明らかにしました。
担当機関(独)森林総合研究所
区分(部会名)森林
背景・ねらいドングリは、アカネズミ(写真1)などの動物にとって秋から冬にかけての貴重な餌資源であり、利用しやすい「良い餌」であると考えられていました。ところが、ミズナラなどのドングリには、タンニンが高濃度で含まれています。タンニンはポリフェノールの一種ですが、多量に摂取すると消化管に損傷を与え、腎臓や肝臓に負担を与えることもあります。実際に、アカネズミを飼育してミズナラのドングリだけを与えると、大半の個体が死んでしまいます。このことからアカネズミは、自然条件下では何らかの方法でドングリ中のタンニンを克服して利用しているものと推測されました。本研究は、アカネズミがどのようにしてタンニンを克服しているのかを解明することを目的としています。
成果の内容・特徴

「馴化(馴れ)」がタンニン克服のキーワード

少量のミズナラのドングリを事前に与え続けてタンニンに馴らしたアカネズミと、馴らしていないアカネズミとにミズナラのドングリを与えてその影響を比較しました。その結果、馴らしていないアカネズミは著しく体重を減らし(平均17.5%減)、14頭中8頭が死亡したのに対し、馴らしたアカネズミではタンニンによるダメージがとても軽くなること(体重、平均2.5%減;死亡12頭中1頭)が判りました。この結果は、「馴化」によってタンニンによるダメージが克服されることを示しています。

なぜ馴化が起きるのか「唾液」と「腸内細菌」によるタンニン克服のメカニズム

アカネズミの体の中で、唾液中のタンニン結合性唾液タンパク質とタンナーゼ産生腸内細菌*は次のように働いていることを明らかにしました。即ち、(1)タンニンを含むドングリを食べると唾液中のタンパク質とタンニンが安定した複合体を作り、タンニンの作用を阻害する、(2)この複合体がタンナーゼ産生細菌の作用で分解され再利用される、という2段階のメカニズムによって、アカネズミはタンニンを克服してタンニンに富むドングリを「餌」として利用できるのです。なお、タンニン結合性唾液タンパク質とタンナーゼ産生細菌は、いずれも日本産哺乳類では初めての発見です。

新たな視点の必要性

ナラ、カシ類が次世代を残すには、森林性野ネズミの活動がプラス・マイナス両面で深く関わっています。彼らは大量にドングリを消費する一方で、ドングリを運搬し、土の中に埋めて貯蔵することで更新の手助けをしています。このような両者の関係について本研究によって明らかにされたことは、従来の「堅果=良い餌」という常識では理解出来ないことを示しています。「動物は、潜在的には有害なドングリを工夫して利用している」という新たな視点から、両者の関係を評価していく必要があります。

本研究は、文部科学省科学研究費補助金「アカネズミにおける堅果中のタンニンに対する防御メカニズムの解明」による成果です。動物実験は日本実験動物学会のガイドラインに従って行いました。

詳しくは、Shimada et al. (2006) Journal of Chemical Ecology 32(6):1165-1180 をご覧下さい。

*被食防御物質;草食者からの食害を回避するために植物が生産する化学物質です。多くは苦みや辛味などを伴い、多量に摂取すると消化阻害や臓器不全などに負の効果をもたらします。
*タンナーゼ産生腸内細菌;タンニンの一種である加水分解性タンニンの分解酵素であるタンナーゼを産生し、タンニンを特異的に分解する腸内細菌群です。なお、ドングリに含まれるタンニンは、主にこの加水分解性タンニンです。
具体的データ
写真1
写真2
図1
研究担当者島田 卓哉(東北支所 生物多様性研究グループ)
発行年度2006
収録データベース研究成果情報

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