モノカリオンを利用した紫紋羽病菌への菌類ウイルスの導入法

モノカリオンを利用した紫紋羽病菌への菌類ウイルスの導入法

タイトルモノカリオンを利用した紫紋羽病菌への菌類ウイルスの導入法
要約 菌類ウイルスに感染した紫紋羽病菌モノカリオン(一核株)をウイルス接種源として他の紫紋羽病菌と対峙することで、MCGに関係無くウイルスを感染させうることを見出した。
キーワード紫紋羽病、菌類ウイルス、モノカリオン、MCG
担当機関(独)農業・生物系特定産業技術研究機構 果樹研究所 リンゴ研究部 病害研究室
(独)農業・生物系特定産業技術研究機構 果樹研究所 生産環境部 病害研究室
広島県立大 生物資源学部
(独)農業環境技術研究所 土壌微生物生態ユニット
連絡先019-645-6156 / xx145112@naro.affrc.go.jp / xx145112@naro.affrc.go.jp
区分(部会名)果樹
区分(部会名)東北農業
分類科学、参考
背景・ねらい
紫紋羽病は植物の根を侵す病害であり、果樹のような永年性作物では薬剤投入量に見合った防除効果が必ずしも期待できないことから、病原性低下因子であるdsRNA(菌類ウイルス)を利用した環境負荷低減型の防除技術が期待されている。dsRNAを本病防除に利用するためには、これらを紫紋羽病菌の種々の菌株に普遍的に導入する必要がある。自然界ではdsRNAの別の菌株への伝播は主として菌糸融合によっているが、菌糸融合を経由したdsRNAの伝播は、所属するMCG(mycelial compatibility group、栄養菌糸和合性群)が菌株間で異なると移行が起こりにくく、また、紫紋羽病菌ではプロトプラスト調製が困難であることなどから、紫紋羽病菌においてはMCGを超えたdsRNAの導入は極めて困難であった。そこで本問題解決のため、モノカリオンを利用した紫紋羽病菌へのdsRNA導入技術を開発する。
成果の内容・特徴
1.
紫紋羽病菌の栄養菌糸は通常二核(ダイカリオン)であるが、ダイカリオン菌株を短期間に繰り返し継代培養すると核が一つしかない菌株(モノカリオン)が生じることを発見した(図1)。
2.
Partitivirus(菌類ウイルスの一種)を含むダイカリオン菌株と、そのダイカリオン菌株と同一のMCGに所属するモノカリオン菌株をオートミール寒天培地上で対峙培養することにより、Partitivirusを含むモノカリオン菌株が作出できる。
3.
Partitivirusを含み、同一MCGに所属するダイカリオン菌株とモノカリオン菌株を菌類ウイルス供与株として、これらとは所属MCGが異なる紫紋羽病菌を受容株として同様に対峙させると、ダイカリオンから受容株に全くウイルスは移行しない(表1)が、モノカリオンからはウイルスが移行する(表1)。さらにRAPD解析により、ウイルス受容前後における受容株のパターンを比較すると全く変化が認められないことから、供与株-受容株間において核の置換は起こっておらず、ウイルスのみの移行であることが確認できる。
4.
同様にTotivirus(菌類ウイルスの一種)を含むモノカリオン菌株を作出し、これらとは所属MCGが異なる紫紋羽病菌を受容株として対峙培養を行うと、受容株に用いた12群のうち7群に属する菌株にTotivirusが移行する(表2)。
5.
以上から、菌類ウイルスを含むモノカリオン菌株との対峙培養によって、所属するMCGが異なる菌株に対してもウイルスを導入可能である。
成果の活用面・留意点1.
受容株において遺伝的な変化はみられないことから、移行したウイルスの宿主に対する影響のみを評価することができる。
2.
形質転換を経ていないので、病原力低下能を有するウイルスが導入された菌株はそのまま野外で使用可能である。
3.
現在のところ、必ずしもすべての菌株に対して有効ではない。
4.
導入の頻度が低いため、対峙培養は反復して行う必要がある。
具体的データ
図1
表1
表2
予算区分紋羽治療(生研一般型)
研究期間1998~2002
研究担当者吉田幸二、兼松聡子、佐々木厚子、松本直幸(農環研)、森永 力(広島県立大)、須崎浩一
発表論文1)Suzaki et al. (2003) Mycoscience 44: 139-147.
特許出願(公開)2)特許申請「ベクターモノカリオンを用いた紫紋羽病菌に対する新規なdsRNA導入法」(特開2002-65279)
発行年度2003
収録データベース研究成果情報

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