タイトル | 糯小麦育成を可能とするWxタンパク質を欠失した変異体の発見 |
要約 | アミロース合成に関係するWxタンパク質の欠失性を世界の小麦遺伝資源を用いて明らかにした。新しく発見された欠失変異体は、糯小麦育成を可能にした。 |
担当機関 | 国際農林水産業研究センター 沖縄支所 世代促進研究室 |
連絡先 | 09808-2-2306 |
区分(部会名) | 国際農林水産業 |
専門 | 遺伝資源 |
研究対象 | 小麦 |
背景・ねらい | 麺用小麦の高品質化においては、麺の粘弾性を高めることが一つの課題である。小麦澱粉中のアミロース含量が低いほど麺の粘弾性が増し、食味がよくなるとされている。本研究では、アミロース合成に関わる酵素であるwaxy(Wx)タンパク質の小麦遺伝資源における欠失変異をSDSゲル電気泳動法(SDS-PAGE)と二次元電気泳動法を用いて解析した。特に、糯小麦育成を可能とする新変異体の発見をめざした。 |
成果の内容・特徴 | - 小麦には3種類のWxタンパク質(Wx-A1、Wx-B1、Wx-D1)が存在する。したがって、各Wxタンパク質の有無に基づけば、小麦を表1に示した8つのtypeに分類できる。このうち、Wx-A1タンパク質を欠く小麦はトルコ、日本および朝鮮半島に比較的高頻度で存在した。Wx-B1タンパク質を欠失した小麦はオーストラリアとインドに多く発見された。一方、Wx-D1タンパク質を欠く小麦は中国に1品種のみ発見された(表2)。Wx-A1とWx-B1タンパク質を二重に欠くtype7の小麦は日本に9品種あったが、type5、type6およびすべてのWxタンパク質を欠くtype8の小麦は存在しなかった。
- 日本の小麦133品種のアミロース含量(黒田ら 1989年)を表1に基づいて分類したところ、アミロース含量はtype1>type2>type3>type7であった(図1)。
- 3種のWxタンパク質をそれぞれコードする遺伝子(Wx-A1、 Wx-B1、Wx-D1)は異なる染色体に座乗する。したがって、日本のみに存在したtype7と中国のtype4の小麦の交雑後代から、表1のすべてのtypeが育成できる。type4の発見はすべてのWxタンパク質を欠き、アミロースを含まない糯小麦の育成を可能にした。
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成果の活用面・留意点 | 新しく発見されたWxタンパク質欠失変異体は糯小麦育成のために活用できる。同時に育成可能なtype1~7の小麦は各Wxタンパク質の欠失とアミロース量との関係の解明に利用できる。 |
具体的データ |
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予算区分 | 科振調・重点基礎 |
研究期間 | 1993~1993 |
研究担当者 | 山守 誠、長峰 司(国研セ)、中村俊樹(東北農試) |
発表論文 | Yamamori et al. (1994) Waxy protein deficiency and chromosomal location of coding genes in common wheat. Theor. Appl. Genet. (in press) |
発行年度 | 1993 |
収録データベース | 研究成果情報 |