ジスルフィド結合をもつ新規アレルゲン候補蛋白質のスクリーニング法
ジスルフィド結合をもつ新規アレルゲン候補蛋白質のスクリーニング法
タイトル | ジスルフィド結合をもつ新規アレルゲン候補蛋白質のスクリーニング法 | ||
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要約 | 翻訳後修飾のジスルフィド構造がアレルゲン蛋白質の共通構造の一つであることを見出し、この成果を基に新規アレルゲン候補蛋白質のスクリーニング法を開発した。二次元電気泳動を活用した本法は低アレルゲン穀物の開発をはじめ農業・医薬分野に広く応用できる。 | ||
キーワード | アレルゲン、二次元電気泳動、ジスルフィド、コメ | ||
担当機関 | (独)農業技術研究機構 中央農業総合研究センター 北陸地域基盤研究部 米品質評価研究室 | ||
連絡先 | 025-526-3245 / hyano@affrc.go.jp / hyano@affrc.go.jp | ||
区分(部会名) | 関東東海北陸農業 | ||
分類 | 科学、普及 | ||
背景・ねらい | 食物アレルギーはアナフィラキシーやアトピー性皮膚炎等の原因とされている。特に主食のコメでは低アレルゲン米の需要が高まっており、アレルゲンの低減化、非アレルゲン化は重要な研究課題である。これまで個々のアレルゲンに対するアンチセンス鎖の導入による低アレルゲン穀物の開発が検討されているが、アレルゲンは未知のものを含めて多数存在するため、実用化は困難な状況にある。そこで広範なアレルゲンを網羅的に検索し、低アレルゲン化を図るための有効な方法の開発が求められている。 本研究は、アレルギーを引き起こす蛋白質の構造的な特徴を明らかにし、蛋白質科学の見地からアレルギー発症のメカニズムを探るとともに、新規アレルゲンのスクリーニング手法の開発をはじめとする治療技術の開発やアレルギー原因物質の低アレルゲン化に資する。 | ||
成果の内容・特徴 | 1. アレルギー性が高いとされるラッカセイ種子の塩溶性画分やコメの塩溶性画分(アルブミン/グロブリン画分)では、ほとんどの蛋白質が分子内ジスルフィド結合を有し(図1)、ジスルフィド結合が穀物貯蔵蛋白質のアレルゲン性の発現に寄与している。 2. ジスルフィド結合を有する蛋白質のみをモノブロモビマンにより特異的に蛍光染色する手法を開発し、二次元電気泳動で分離することで、ジスルフィド結合を有する蛋白質(アレルゲン候補)を同定することができる(図2)。 3. 上記手法をコメの塩溶性画分に応用し、ジスルフィド結合を有する蛋白質を二次元電気泳動上で検出した(図3)。これらのうち、9つの内部アミノ酸配列を決定し、既存のアレルゲンや既存のアレルゲンに相同性を有する新規蛋白質および相同性をもたない新規蛋白質を検出できることを確認した(表1)。 4. 以上により、翻訳後修飾のジスルフィド構造はアレルゲン蛋白質の共通構造の一つであり、この成果を活用したスクリーニング法により新規アレルゲン候補蛋白質を網羅的に検索することができる。 | ||
成果の活用面・留意点 | 1. 本研究成果は穀物に限らず、ハウスダストや花粉のアレルゲンのスクリーニングにも応用できることが確認されている。 2. 蛋白質のアレルゲン性とジスルフィド構造との関係から、遺伝子組換えやポストハーベストでの処理により、ジスルフィド結合を破壊することで未知のものを含めて多くのアレルゲンを一度に低アレルゲン化できることが期待される。 3. 本スクリーニング法は特許出願中である。 | ||
具体的データ | |||
図表 | |||
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予算区分 | プロテオーム | ||
研究期間 | 2002~2002 | ||
研究担当者 | 黒田秧、矢野裕之 | ||
発表論文 | 1) Yano et al. (2002) Proteomics 2:1090-1096. | ||
特許出願(公開) | 2) 矢野・黒田 (2002)「アレルゲン蛋白質の検出方法」特願2002-236048 | ||
発行年度 | 2002 | ||
収録データベース | 研究成果情報 |