タマネギ栽培地周辺のIYSV保毒虫誘殺消長と防虫ネットによる施設への侵入抑制
タマネギ栽培地周辺のIYSV保毒虫誘殺消長と防虫ネットによる施設への侵入抑制
タイトル | タマネギ栽培地周辺のIYSV保毒虫誘殺消長と防虫ネットによる施設への侵入抑制 | ||
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要約 | タマネギ栽培地周辺におけるIYSVの媒介虫であるネギアザミウマの誘殺数と保毒虫率は、タマネギ収穫後に著しく増加するが、近隣のトルコギキョウ栽培ハウスでは開口部を0.6mm目合い程度の防虫ネットで被覆することで、ハウス内への侵入を抑制することができる。 | ||
キーワード | トルコギキョウ、ネギアザミウマ、IYSV、防虫ネット | ||
担当機関 | 長野野花試 病害虫土壌肥料部 | ||
連絡先 | 026-278-6848 | ||
区分(部会名) | 関東東海北陸農業 | ||
分類 | 技術、参考 | ||
背景・ねらい | 近年、長野県内のトルコギキョウ栽培において、アイリス輪紋ウイルス(IYSV)によるえそ輪紋病の発生が多発し問題となっている。このウイルスはユリ科植物を好んで寄生するネギアザミウマによって媒介され、長野県内においても多発傾向にあり、特に水田裏作畑でタマネギが栽培されている地区で被害が大きい。そこで、これらの地区におけるネギアザミウマの誘殺消長とIYSV保毒虫率を調査するとともに、防虫ネット利用の有効性を検討し、耕種的な防除技術の導入を進める資料とする。 | ||
成果の内容・特徴 | 1. タマネギ栽培地周辺のトルコギキョウ栽培ハウス内およびその周辺では、ネギアザミウマが5月中旬から誘殺され始め、次第にその数は増加する。特に6月下旬では、タマネギ栽培地に面した地点(図1)で誘殺数が最も多い(図2-A~D)。なお、6月中旬~下旬は水田裏作で栽培しているタマネギ栽培跡地への入水時期にあたる。 2. 各調査地点におけるネギアザミウマの保毒虫率は、5月中旬から徐々に高くなり、6月下旬にはタマネギ栽培跡地に面した地点で、約24%のネギアザミウマからIYSVが検出される(図2-D)。 3. ネギアザミウマに対する施設開口部への防虫ネットの設置は、1.0mm目合いのものより0.6mm目合いの侵入抑制効果が高い(図2-B,-C)。 4. 以上のことより、IYSV感染源となるタマネギの栽培跡水田への入水期は、IYSVを保毒したネギアザミウマの周辺への飛翔が特に高まる危険性がある。また、近隣のトルコギキョウ栽培ハウスでは、ネギアザミウマの侵入防止対策として、0.6mm目合い以下の防虫ネットの施設開口部への設置が有効である。 | ||
成果の活用面・留意点 | 1. 現在のところIYSV感染源植物としては、トルコギキョウ、タマネギのほか、アイリス、リーキ、ネギ、ニラ、アルストロメリアなどが報告されており、これら作物の栽培近隣においても防虫ネットの利用が有効と考えられる。 2. 飛来源には、他のユリ科植物や雑草等も考えられる。防虫ネット利用等の耕種的防除技術だけでなく、雑草駆除等の圃場衛生向上にも努めることが必要である。 3. 栽培ハウスだけでなく、育苗施設にも同様の注意が必要である。 | ||
具体的データ | |||
図1.トルコギキョウ施設の位置関係と青色粘着シート設置場所(A~D) | |||
図2 タマネギ栽培跡地に面した地点(A~D 地点)におけるネギアザミウマ誘殺消長とIYSV 保毒虫率の推移(誘殺数は設置した粘着シート2 枚の合計) | |||
予算区分 | 国補(高度化) | ||
研究期間 | 2005~2007 | ||
研究担当者 | 夏秋知英(宇大)、宮坂昌実、宮本賢二、現静岡西部農林事務所)、古畠修一(長野農改)、小木曽秀紀、藤永真史、内山徹((静岡農林研) | ||
発表論文 | 藤永真史ら(2007)関東東山病害虫研究会報54:89-92 | ||
発行年度 | 2007 | ||
収録データベース | 研究成果情報 |