タイトル | イチジク密植株仕立て栽培は、凍寒害後の収量確保に有効 |
要約 | イチジク「桝井ドーフィン」の密植株仕立て栽培は、凍寒害当年並びにその後において一文字整枝栽培の2~3倍程度の収量を確保できる。また、結果枝が定芽で確保できない場合は、不定芽を利用しても定芽と同程度の収量および果実品質が得られる。 |
キーワード | イチジク、密植、株仕立て栽培、凍寒害、定芽、不定芽 |
担当機関 | 茨城農総セ園研 果樹研究室 |
連絡先 | 0299-45-8340 |
区分(部会名) | 関東東海北陸農業 |
分類 | 技術、参考 |
背景・ねらい | イチジク「桝井ドーフィン」は、寒さに弱いことから本県における栽培適地は県南地域に限られていた。しかし、イチジクは直売向け特産果樹並びに健康食品として消費者のニーズが高く、県北地域など寒冷地域での栽培拡大が望まれている。 ここでは、従来の一文字整枝栽培と比較し、密植株仕立て栽培(以下、株仕立て栽培)が凍寒害当年並びにその後の収量確保に有効であることを明らかにする。
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成果の内容・特徴 | - 株仕立て栽培の収量は、栽植1年目(2005年)が一文字整枝栽培の約1.4倍、凍寒害当年(2006 年)が約3.4倍、凍寒害後(2007~2008年)が約1.9~2.2倍であり、一文字整枝栽培より多く確保できる(図1)。
- 結果枝数は、株仕立て栽培では栽植1年目(2005年)から4年目まで目標の結果枝数(約2770本/10a)をほぼ確保できるが、一文字整枝栽培では主枝長を確保するのが難しく栽植1年目で50 %程度、凍寒害当年(2006年)では25%程度、凍寒害後(2007~2008年)では50~70%程度しか確保できない(図2)。
- 株仕立て栽培の果実重・糖度・果皮色・裂果程度など果実品質は、一文字整枝栽培と同等である。(表1)。
- 定芽由来結果枝と不定芽由来結果枝の間では、結果枝の生育・収量および果実品質に差がない(表2)。
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成果の活用面・留意点 | - 株仕立て栽培は、列間1.8m 株間0.8mで10a当たり692株を栽植する。せん定方法は、結果母枝(前年の結果枝)数本の定芽2芽程度を残して切り戻す。結果枝は1株当たり4本が目標であるので、発芽後に芽欠きを行い生育の揃った4芽を残し、四方に0.4m間隔になるよう配置し結果枝とする。定芽由来の結果枝が確保できない場合は、株元から発生する不定芽を利用する。結果枝は、20~25節程度で摘芯する。
- 各試験年度におけるマイナス4℃以下の低温遭遇時間は、2005年11月から2006年4月が237時間、2006年11月から2007年4月が53時間、2007年11月から2008年4月が160時間である。また、マイナス8℃以下の低温遭遇時間は、2005年11月から2006年4月が31時間、その他は0時間である。
- 株仕立て栽培は、凍寒害当年では低収量となるが密植しているため凍寒害次年以降の回復が早く、凍寒害により一文字整枝栽培が困難であった寒冷地域に適用できる。
- 着果開始節位は、株仕立て栽培と一文字整枝栽培の間で差はないが、凍寒害直後に着果節位が数節上がる傾向である。
- 株仕立て栽培は、栽植1年目から一文字整枝栽培より収量と結果枝数を多く確保できることから、早期成園化にも有効である。
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具体的データ |
図1 栽培方法の違いが収量に及ぼす影響 |
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図2 栽培方法の違いが結果枝数等に及ぼす影響 |
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表1 栽培方法の違いが果実品質に及ぼす影響 |
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表2 株仕立て栽培における結果枝の由来の違いが収量および果実品質に及ぼす影響(2008年) |
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予算区分 | 県単 |
研究期間 | 2005~2008 |
研究担当者 | 門脇伸幸、関根伸昭、江橋賢治、多比良和生 |
発行年度 | 2008 |
収録データベース | 研究成果情報 |