水田における稲わらのすきこみと冬期湛水を組み合わせた水系の硝酸性窒素除去技術

水田における稲わらのすきこみと冬期湛水を組み合わせた水系の硝酸性窒素除去技術

タイトル水田における稲わらのすきこみと冬期湛水を組み合わせた水系の硝酸性窒素除去技術
要約硝酸性窒素の除去による水質浄化が必要な地域内の水田において、湛水直前に稲わらをすきこみ、本来は非灌漑期間である冬から初春に湛水状態を保つことにより、農業水系における窒素除去量を安定的かつ効率的に高めることができる。
キーワード脱窒、水田、窒素除去、冬期湛水、有機物すきこみ
担当機関生産環境部
静岡農林研 環境水田プロ
連絡先0538-36-7211
区分(部会名)共通基盤
区分(部会名)関東東海北陸農業
分類技術、行政、普及
背景・ねらい茶園-水田地形・地目連鎖系においては台地から流出した硝酸性窒素(以下、窒素とする)が水田の脱窒作用によって除去される。こうした水田の窒素除去機能を積極的に活用するためには、湛水期間を拡大することが有効である。水稲の収穫作業等を勘案すると、湛水の拡大期間は冬期から初春の時期に設定し、冬期湛水体系とすることが望ましい。しかし、一方では脱窒活性が低い低温期においては表面流去水での除去速度は低下することが知られている(平成17年度共通基盤土壌肥料成果情報「冬期掛け流し潅漑を行う場合の水田の硝酸性窒素除去能の推定式」)。
 ここでは冬期湛水を行った実規模の営農水田において窒素除去量の増加効果を実証するとともに、冬期湛水に稲わらのすきこみを組み合わせることにより冬期の窒素除去量をさらに高める技術を提案する。
成果の内容・特徴
  1. 現地実証地域のデータをもとに、慣行での灌漑体系および冬期湛水を実施した体系での窒素除去量を比較すると、それぞれ20~50、350~810kgN/ha/yとなり、冬期湛水による窒素除去量は慣行灌漑体系よりも大きい(表1)。この原因として湛水期間の拡大のほか、間断灌漑等を行わない冬期湛水期間の灌漑水量が多いことも挙げられる。
  2. 湛水直前に稲わらすきこみを行うと冬期間(1~3月)の田面水の窒素濃度は耕うんのみを行った対照区より低く推移し(図1)、積算窒素除去量は対照区の2倍となる。稲わらすきこみ区では低温培養での脱窒活性が有意に高く、有機物施用による低温期の窒素除去量の増大には土壌中での脱窒活性の増大が寄与している(図2)。
  3. 以上の結果から得られた窒素除去のための冬期湛水体系を図3に示す。水田の脱窒能を用いて農業水系の窒素除去を行うためには、硝酸性窒素濃度が高い地域内の水田において湛水前に稲わら等をすきこみ、本来は非灌漑期間である冬から初春に主に掛け流し灌漑によって湛水状態を保つことが有効である。
成果の活用面・留意点
  1. 灌漑期間の拡大によって地域水系の硝酸性窒素を除去するための技術として利用できる。
  2. 冬期湛水を行うためには、地域によっては他の水利権者との調整が必要となる。
  3. ここで提案した取組は平成21年度から農水省が所管する「農地・水・環境保全向上対策事業」の「環境にやさしい営農活動」のメニューとして追加される。
  4. 当技術においても通常の冬期湛水と同様に、生物生息場所の提供、水田生態系の保全、冬期の地下水涵養、雑草の抑制効果、水田の地耐力の低下等の長所と短所が認められる。
具体的データ
表1 冬期湛水体系と慣行体系の窒素除去量の比較
図1 表面水での硝酸性窒素濃度比に対する稲わらすきこみの影響
図2 稲わらをすきこんだ土壌の低温下での脱窒活性
図3 窒素除去のための冬期湛水と慣行体系のほ場管理様式の比較
予算区分県単、指定試験
研究期間2007~2009
研究担当者高橋智紀、新良力也(中央農研)、宮地直道(日本大学)、福島務、稲垣栄洋、大石智広、松野和夫
発行年度2008
収録データベース研究成果情報

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