タイトル | ウイロイド保毒のカラタチ台カンキツに見られる台木の剥皮症状と樹勢低下 |
要約 | カンキツエクソコーティスウイロイド(CEVd)以外の数種ウイロイドが複合感染したカラタチ台カンキツにも、CEVdによるのと同様に、台木部の激しい剥皮症状と著しい樹勢低下が見られる。 |
キーワード | ウイロイド、複合感染、剥皮症状、樹勢低下、カラタチ台カンキツ |
担当機関 | 山口大島柑きつ試 |
連絡先 | 0820-77-1019 |
区分(部会名) | 近畿中国四国農業 |
分類 | 技術、参考 |
背景・ねらい | カンキツが保毒するウイロイドには、カンキツエクソコーティスウイロイド(CEVd)、カンキツベントリーフウイロイド(CBLVd、特殊な変異株CVd-I-LSSを含む)、ホップ矮化ウイロイド(HSVd)、カンキツウイロイド(CVd)-Ⅲ、CVd-ⅣおよびCVd-OSの計6種がある。そのうち、CEVdはカラタチ台カンキツの台木部の剥皮症状と樹勢低下を引き起こすエクソコーティス病の病原であるが、その他のウイロイドがカンキツ樹に及ぼす影響は不明な点が多い。とくに最近、CEVd以外のウイロイドの複合感染が「不知火」などカンキツの新品種に多く見られることから、その影響について明らかにする。
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成果の内容・特徴 | - 試験場内および経済栽培されている現地の「不知火」の高接ぎ樹において、CVd-Ⅰ-LSS、HSVd、CVd-Ⅲ、CVd-ⅣおよびCVd-OSの5種ウイロイドの複合感染が広く確認される。CEVdについては陰性である。これらの樹のカラタチ台木部には、高接ぎ6年目ころからエクソコーティス病に特徴的な、激しい亀裂や剥皮の症状が発生する(図1)。
- CEVd以外の5種のウイロイドに複合感染した「不知火」の穂木をカンキツトリステザウイルス(CTV:国内の露地栽培カンキツはすべて保毒)免疫性のカラタチに一度接木してCTVを除去後、カラタチ台「上野早生」ウンシュウの苗木に接木してウイロイドを接種すると、その1年後から生育の抑制が認められる。とくに樹冠容積は、接種4年後には無接種樹の約1/3に抑制される(図2、表1)。剥皮症状は接種4年後までは発生しない。なお、使用した「不知火」の穂木は、国内で既知のウイルスのうちカンキツ樹の樹勢低下に関わるウンシュウ萎縮ウイルスおよびリンゴステムグルービングウイルス(カンキツタターリーフウイルス)について、陰性である。
- 以上のように、エクソコーティス病に特徴的なカラタチ台カンキツの台木部の剥皮症状と樹勢低下は、CEVd以外のウイロイドの複合感染によっても引き起こされる可能性が高い。
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成果の活用面・留意点 | - カラタチ台「不知火」などで多く見られる樹勢低下に、ウイロイドが大きく関わっている可能性が考えられるので、その防除対策を徹底する。
- 無毒苗木の作出や母樹検定時に、CEVdを含めた全てのウイロイドの診断・同定を行なう。
[具体的なデータ]
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具体的データ |
図1 |
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図2 |
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表1 |
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予算区分 | 単県 |
研究期間 | 1997~2002 |
研究担当者 | 村本和之 |
発表論文 | 村本・伊藤(2001)日植病報67(2):141-142村本(2001)山口農試研報52:1-12 |
発行年度 | 2001 |
収録データベース | 研究成果情報 |