納豆菌の挿入配列IS 4Bsu1の挿入箇所

納豆菌の挿入配列IS 4Bsu1の挿入箇所

タイトル納豆菌の挿入配列IS 4Bsu1の挿入箇所
要約 納豆菌(宮城野株)がゲノム中に6コピー持っている挿入配列IS4Bsu1の挿入箇所を明らかにした。また、新たに挿入配列IS256Bsu1を同定した。挿入配列の多型は納豆種菌の峻別や管理に利用することができる。
キーワード納豆菌、挿入配列
担当機関(独)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所 微生物利用研究領域 発酵細菌ユニット
連絡先029-838-8076
区分(部会名)食品
分類研究、参考
背景・ねらい
 日本の納豆および東・東南アジアの国々で生産されている無塩ダイズ発酵食品では枯草菌(Bacillus subtilis)の仲間が発酵の主体として利用されている。納豆製造では宮城野株(三浦株)、成瀬株、高橋株が市販種菌として使われている他、自社開発株が使われている場合もある。これらの菌株はすべてBacillus subtilisに属し、微生物の分類・同定に用いられる生理的性質や生化学的性質が互いによく似ている。16SリボゾームDNA配列にも違いはない。東・東南アジアで使われている株も納豆菌と非常によく似ている。しかしながら、納豆製造時には発酵の速さ、ダイス成分分解の強さ、臭気、2次発酵の始まる時期などに株ごとの違いがある。そのため、使用している株を他の株と区別して生産管理する必要があり、簡便な菌株峻別法が求められていた。また、知財としての納豆種菌を守るためにも、東・東南アジアで使われている類縁株と区別する手段が必要である。
 挿入配列(Insertion sequence, IS)はゲノム上で転位できるので、そのコピー数や挿入箇所に多型を生じやすい。そのため、遺伝的に近縁な株同士を区別するマーカーとして利用できる。
成果の内容・特徴
  1. 納豆種菌はゲノム中に挿入配列IS4Bsu1を持っている。主要な納豆種菌、宮城野株(三浦株)と成瀬株は6コピー、高橋株は11コピーのIS4Bsu1を持っている。
  2. 納豆種菌はゲノム中に挿入配列IS256Bsu1を持っている。主要な納豆種菌、宮城野株(三浦株)は9コピー、成瀬株、高橋株はそれぞれ8コピー、10コピーのIS256Bsu1を持っている。
  3. 宮城野株(三浦株)の6つのIS4Bsu1の挿入箇所を明らかにした(図1)。1つはyktD遺伝子内にある。残りの5つは、遺伝子間領域(iolAとiolRの間、tuaAとlytCの間、rapIとorf1の間、ynaEとorf3の間、orf4とorf5の間)に存在する。
  4. 東・東南アジアの国々で生産されている無塩ダイズ発酵食品から分離されるBacillus subtilisは、その多くがIS4Bsu1を持っている。IS4Bsu1の挿入箇所のパターンと分離源の地理的な関係には相関は見られない。
  5. 挿入配列をプローブとして、サザン解析により種菌の判別ができる(図2)。
成果の活用面・留意点
  1. IS4Bsu1とIS256Bsu1の両IS情報を組み合わせて種菌の判別や管理に活用できる。
  2. IS4Bsu1、IS256Bsu1は保存的複製によって自身のコピーを作成するため、挿入配列のコピー数が増える可能性がある。IS4Bsu1はcomP(ポリグルタミン酸の合成に必要な遺伝子)内に転移し、comP遺伝子破壊によりポリグルタミン酸生産が失われる。このときIS4Bsu1のコピー数が一つ増えている。

具体的データ
図1.宮城野株(三浦株)のIS4Bsu1の挿入箇所
6コピー(a~f)のIS4Bsu1を黒塗りの矢印で、挿入箇所の周辺遺伝子を白抜きの矢印で表し、遺伝子名をその下に記した。数値(%)は枯草菌実験室株遺伝子とのアミノ酸配列相同性を示す。宮城野株と実験室株で遺伝子の並び方が違うときは、並べて表記した。
図2.IS256Bsu1のサザン解析例
納豆種菌(高橋株、三浦株、旭川株、成瀬株)の制限酵素EcoRIで消化したゲノムDNAとIS256Bsu1をプローブとして用いた。*記はバンドが2本あることを示す。
予算区分委託プロ(ジーンバンク)
研究期間2006~2010
研究担当者伊藤義文、木村啓太郎
発表論文Kimura, K. and Itoh, Y. (2007) Biosci. Biotechnol. Biochem. 71 (10):2458-2464
発行年度2008
収録データベース研究成果情報

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