植物体内におけるホウ素の化学形態と新たな機能

植物体内におけるホウ素の化学形態と新たな機能

タイトル植物体内におけるホウ素の化学形態と新たな機能
要約 必須微量元素であるホウ素は,植物体内で,水溶性のホウ酸とホウ酸モノおよびジエステル態として存在し,また,細胞壁中では,ホウ酸ジエステル態としてペクチンを架橋し,基本構造体の構成要素として機能している。さらに,ホウ素を含む多糖複合体は,鉛など毒性元素を捕捉する機能をもつ。
担当機関農業環境技術研究所 資材動態部 肥料動態科
連絡先0298-38-8236
区分(部会名)農業環境
専門肥料
分類研究
背景・ねらい ホウ素(B)は,植物の生育に必須な微量元素であるが,その植物体内での役割は十分には知られていない。そこで,最新のNMR(核磁気共鳴法)およびHPLC/ICP-MS(高速液体クロマトグラフィー/誘導結合プラズマ質量分析法)により植物体内のホウ素の存在化学形態を測定し,ホウ素の植物における機能を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. コマツナ葉・根,ダイコン根,リンゴ果実など植物体を直接,11B NMR測定した。その結果(図1)から,植物体中のホウ素は,ホウ酸以外に,ホウ酸イオンモノエステルおよびジエステルの形態で存在していることを証明した。また,ダイコン根などにおいて,11B NMR吸収は溶存状態で得られ,分子運動性が低い状態である細胞壁中のホウ素からは得られない。
  2. テンサイ根およびタケノコの細胞壁を酵素で分解し,この分解液からホウ素を含むB-多糖複合体を各種クロマトグラフィーにより単離し,B-多糖複合体の糖組成・結合,分子量,ホウ素の化学形態等を調べた。その結果から,細胞壁中のホウ素は,ホウ酸ジエステルの形態で存在し,ラムノガラクツロナンⅡ(RG-Ⅱ)部分でペクチンを架橋していることを明らかにした(図3)。
  3. B-RG-Ⅱ複合体試料およびそれに各種処理した試料を,サイズ排除HPLC/ICP-MS測定した。そのとき,同時に複数元素を検出した。その結果(図2)から,B-RG-Ⅱは,Sr,Ba,Pbを特異的に含有し,これら金属イオンを吸着するが,はずしても構造を維持できることを示した。このことから,B-RG-Ⅱは毒性元素のSr,Ba,Pbを細胞壁で捕捉する機能をもつことを示唆した。
  4. 以上のことから,植物にホウ酸の形で吸収されたホウ素は,水溶性プールではホウ酸とホウ酸イオンエステルの形態で存在し,その後,細胞壁に取り込まれ,ペクチン分子を架橋すると推定した(図3)。
成果の活用面・留意点 本成果は,ホウ素の植物栄養学の基礎的知見となり,今後,ホウ素の欠乏症・過剰症発現機構の解明や栄養診断技術の開発などへの寄与が見込まれる。
具体的データ
図1
図3
図2
予算区分経常
研究期間1997~1997
発表論文1)T. Matsunaga and T. Nagata, Anal. Sci., 11, 889-892 (1995)
2)S. Kaneko et al., Phytochem., 44, 243-248 (1997)
3)T. Matsunaga et al., XIII Int. Plant Nutri. Colloq., 81-82 (1997)
発行年度1997
収録データベース研究成果情報

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