大気CO2濃度の上昇と群落微気象要因を考慮したイネの穂温推定モデル

大気CO2濃度の上昇と群落微気象要因を考慮したイネの穂温推定モデル

タイトル大気CO2濃度の上昇と群落微気象要因を考慮したイネの穂温推定モデル
要約開放系大気 CO2 増加(FACE)実験における微気象観測結果を解析し,熱収支に基づくイネの穂温推定モデルを開発した。本モデルは,温暖化や大気 CO2 濃度上昇時に懸念される開花期高温不稔や登熟障害の発生予測に役立つ。 
担当機関[分類]学術
(独)農業環境技術研究所 地球環境部 気象研究グループ
区分(部会名)農業環境
分類学術
背景・ねらい大気CO2濃度の上昇は,イネの成長促進と増収効果を持つ一方,気孔開度の減少,蒸散の抑制,群落温度の上昇を通じて,温暖化や高温地域で問題となる開花期不稔を激化させる可能性がある。高温,高CO2環境下における不稔発生を予測するためには,的確な穂温の予測が必要であるが,穂温は水田の微気象条件に強く依存するため,単純に気温から推定することはできない。そこで,開放系大気CO2増加(FACE)実験水田で微気象観測を行い,穂を取り巻く微気象環境が穂温に影響を及ぼすプロセス(図1)を考慮した穂温推定モデルを開発し,大気CO2濃度上昇に伴う穂温の上昇程度を明らかにする。 
成果の内容・特徴
  1. 中国江蘇省無錫の水田FACE実験圃場(イネ品種:武香粳14号)の[現CO2濃度区]と[高CO2濃度区(=現CO2濃度+200ppm)]で,出穂・開花期に微気象観測を行った。高CO2濃度による気孔開度の減少は個葉の蒸散を抑制し,潜熱として葉面の熱が奪われる冷却効果を減らすため,[高CO2濃度区]の葉温は[現CO2濃度区]に比べて1~2℃高かった(図2)。また,群落内の気温は,[高CO2濃度区]の方が0.5~1℃高く,相対湿度は5~8%低かった。
  2. 穂は表面に気孔がなく,表皮を通して蒸散しているため,高CO2濃度の穂の蒸散速度への直接的な影響はなかった。両CO2濃度区とも,穂の蒸散速度は開花直後に高く,日数が経つにつれて減少する傾向を示した。
  3. FACE実験水田の微気象変化と穂の蒸散速度の測定データを用いて,穂の温度を推定する熱収支モデルを開発した。高CO2濃度による穂温の上昇は0.5~1℃(図3a)と,高CO2濃度による微気象変化のみで高温不稔を助長し得ることがわかった。また,高CO2濃度は,穂温を上げると同時に,群落内の湿度を下げるため(図2)穂の蒸散(脱水)を促進した(図3b)。
  4. 高CO2濃度による穂温の上昇と蒸散の増加は,開花期のみならず登熟期間全体にもわたることから,高CO2濃度は開花期高温不稔だけでなく,未熟粒の増加といったコメの品質低下にも影響する可能性がある。
成果の活用面・留意点
  1. 温暖化・CO2濃度上昇に伴う,イネの高温不稔の発生予測や,近年頻発する高温登熟障害の現象解明,高温耐性形質の探索に活用できる。
  2. 穂温推定には,全天日射量・下向き長波放射量・気温・湿度・風速などの気象要素と品種固有の蒸散特性のデータが必要である。
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具体的データ
具体的データ
予算区分環境研究[地球温暖化]
研究期間2002~2005
研究担当者吉本真由美、小林和彦(東京大)、大上博基(愛媛大)、長谷川利拡
発表論文1)Yoshimoto et al., J. Agric. Meteorol., 60(5), 597-600 (2005)
2)Oue et al., Phyton, 45(4), 117-124 (2005)
発行年度2005
収録データベース研究成果情報

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