粗飼料の給与は牛の腸管出血性大腸菌O157の排菌を抑制する

粗飼料の給与は牛の腸管出血性大腸菌O157の排菌を抑制する

タイトル粗飼料の給与は牛の腸管出血性大腸菌O157の排菌を抑制する
要約牛の腸管出血性大腸菌O157の排菌に及ぼす飼料の影響を検討した。粗飼料(乾草)給与牛では本菌の定着が抑制され、濃厚飼料給与牛では促進された。保菌牛に乾草を給与したところ、排菌数が短期間で減少した。
キーワード腸管出血性大腸菌O157、排菌制御、粗飼料、濃厚飼料
担当機関(独)農業技術研究機構 動物衛生研究所 安全性研究部 ズーノーシス研究室
連絡先029-838-7815
区分(部会名)動物衛生
分類技術、参考
背景・ねらい腸管出血性大腸菌(EHEC)O157は人獣共通感染症(ズーノーシス)の病原体であり、牛は本菌の保菌動物のひとつである。EHEC感染症対策の一環として、牛の飼育段階における保菌抑制技術の確立が強く要請されている。そこで、実際的な手法の開発を目的として、異なる飼料を給与した牛におけるEHEC O157の定着性を調べ、飼料による排菌制御法を検討した。
成果の内容・特徴1.
給与飼料とEHEC O157排菌の関係
実験牛は健康なEHEC O157非保菌牛(ホルスタイン種、5カ月齢、雄)4頭を用い、2頭(No.1、No.3)には乾草(チモシー乾草、ヘイキューブ)のみ4kg/頭/日を、他の2頭(No.2、No.4)には濃厚飼料(TDN 70%以上)のみ3kg/頭/日を給与した。当該飼料で飼育後4週目に牛由来EHEC O157:H7、MN-157株の109.7/頭を経口投与し、糞便への排菌状況を調べた。
その結果、乾草給与牛でのEHEC O157排菌は投与後1日目にNo.1で102.4個/g、No.3で100.6個/g認められたものの、投与後7日目以降、本菌は分離陰性となった(表1)。一方、濃厚飼料給与牛では、投与後5日目にNo.2牛が106.8個/g、No.4が107.3個/gに達し、その後徐々に減少しつつ4週間以上間欠的に排菌した。このように、排菌は乾草給与牛で抑制され、濃厚飼料給与牛で促進されたことから、濃厚飼料の給与を制限し、乾草を適切に給与することによって、牛のEHEC O157の排菌を制御できる可能性が示唆された。給与飼料によって排菌数が異なる理由は不明だが、乾草給与牛では総揮発性脂肪酸量が低いことから(表1)、消化管内におけるEHEC O157の増殖に必要な栄養素の減少が影響しているものと考えられた。
2.
乾草給与によるEHEC O157排菌の抑制
実験牛は健康なEHEC O157非保菌牛(ホルスタイン種、5カ月齢、雄)4頭を用いた。牛(No.5~No.8)は通常飼料(乾草2kgと濃厚飼料2kg/頭/日)で飼育後、牛由来EHEC O157:H7、360-1株の109.8個/頭を経口投与した。菌投与5日目から、No.5とNo.6牛は乾草のみ4kgを、No.7とNo.8牛はそのまま通常飼料を給与し、EHEC O157の排菌状況を調べた。
その結果、乾草給与のNo.5とNo.6牛は給与2日目頃から排菌が減少し、給与5日目以降本菌は分離陰性となった(図1)。一方、通常飼料給与のNo.7牛は3日目頃から、No.8牛は5日目頃から菌数が減少したが、菌投与後3週間以上間欠的に排菌した。このように、乾草給与は通常飼料給与に比べより短期間で排菌数を減少させた。
成果の活用面・留意点1.
実験感染牛では、粗飼料(乾草)給与によりEHEC O157の排菌を抑制することができたが、野外の自然保菌牛における粗飼料給与の効果を検討する必要がある。
2.
粗飼料のみの給与が生産性や肉質に及ぼす影響を検討する必要がある。
具体的データ
図表
図表
予算区分交付金
研究期間2000~2002
研究担当者吉井紀代、鮫島俊哉、中澤宗生
発表論文1)中澤・鮫島 (2002) 感染症学誌 76:76-77.
2)中澤ら (2002) 畜産の研究 56:470-474.
発行年度2002
収録データベース研究成果情報

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