脳組織の変敗が異常プリオン蛋白質の検出に与える影響

脳組織の変敗が異常プリオン蛋白質の検出に与える影響

タイトル脳組織の変敗が異常プリオン蛋白質の検出に与える影響
要約 実験的に変敗させたBSE感染牛脳組織より市販のエライザキットおよびウエスタンブロット法を用いて異常プリオン蛋白質の検出を行った。その結果、組織の変敗に伴い異常プリオン蛋白質のアミノ末端領域が消化されることによりエライザ値は低下した。これに対し、ウエスタンブロット法では変敗に伴うシグナル強度の低下はみられなかった。
キーワードウシ、BSE、異常プリオン蛋白質、エライザ、ウエスタンブロット法
担当機関(独)農業・生物系特定産業技術研究機構 動物衛生研究所 プリオン病研究センター 病原
連絡先029-838-7757 / tyoko@affrc.go.jp / tyoko@affrc.go.jp
区分(部会名)動物衛生
分類科学、参考
背景・ねらい
 病原体プリオンの主要構成成分である異常プリオン蛋白質(PrPSc)は蛋白質分解酵素処理に対し部分抵抗性を示す。BSE検査は蛋白質分解酵素処理後に残存するPrPScの牛脳組織からの検出に基づいている。へい死牛のBSE検査では死後相当時間の経過した検体を扱う場合がある。組織の変敗が現行の市販エライザキットを用いたBSE検査に与える影響を調べるため、実験的に長時間放置したBSE感染脳組織より市販エライザキットおよびウエスタンブロット法(WB)を用いてPrPScの検出を行った。
成果の内容・特徴1.
BSE罹患牛脳組織をプラスチック容器に取り分けて密封し30℃あるいは37℃で1~4日間放置後、市販キットを用いてエライザを行った。その結果、すべての試料よりPrPScが検出できたが、組織の変敗に伴いエライザ値(吸光度)の低下がみられた(図1)。これに対し、WBでは37℃で4日間放置後もPrPScのシグナル強度は低下しなかった(図2A)。
2.
市販エライザキットで抗原の捕捉に用いられる抗体はPrPScの蛋白質分解酵素感受性であるアミノ末端領域を認識する(図3)。蛋白質分解酵素未処理のサンプルからWBによりプリオン蛋白質を検出した結果、変敗に伴いアミノ末端領域が消化されることが示された(図2B、C)。変敗組織中では内因性または二次的に増殖した微生物由来の酵素により捕捉抗体の認識部位が消化され、エライザ値の低下を引き起こすと考えられる。
3.
37℃で2日間放置した試料は肉眼的に変敗が特に著しく、特異なエライザ値の低下が認められた。しかしWBによる解析の結果、他のサンプルと比較してPrPScの部分消化がとりわけ進んでいるわけではなかったことから、この試料を入れた容器内で特に急速に変敗が進んだ結果、何らかのELISA阻害物質が生じた可能性が考えられる。
成果の活用面・留意点 死亡牛のBSE検査に際し、死後変化の著しい脳組織を扱う場合には、WBが最も信頼性の高い検査法であることが示された。希釈サンプルを用いたエライザの結果が示すように、異常プリオン蛋白質の蓄積が少ない潜伏期初期の感染牛の場合には組織の変敗が検査結果に影響を及ぼす可能性が懸念される。本成績をふまえた現場での対応が求められる。
具体的データ
図1
図2
図3
予算区分交付金プロ/プリオン病 (4110)
研究期間2000~2002
研究担当者林 浩子、高田益宏、岩丸祥史、牛木祐子、木村久美子、田川裕一、品川森一、横山 隆
発行年度2003
収録データベース研究成果情報

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