微生物の水素生産機能改良のためのメタボリックエンジニアリングモデル

微生物の水素生産機能改良のためのメタボリックエンジニアリングモデル

タイトル微生物の水素生産機能改良のためのメタボリックエンジニアリングモデル
要約 有機廃棄物等の分解と共役した水素エネルギー生産に適した機能を備えた微生物素材作出のためのメタボリックエンジニアリング、すなわち遺伝子操作による機能改良のモデルとして、大腸菌を材料に水素産生効率の向上と・水素産生機能の環境適応性拡大について検討した。
担当機関農業生物資源研究所 機能開発部 徴生物機能利用研究室
連絡先0298-38-7451
区分(部会名)生物資源
専門バイテク生理環境保全資源利用
研究対象微生物(細菌)
分類研究
背景・ねらい 次世代のクリーンエネルギーの一つとして有力視されている水素エネルギーの実用化にあたっては資源・環境の保護およびエネルギー収支等の視点から、現在の主たる製造方法である石油の熱分解に替わる新たな製造手段の開発が重要な課題となっている。担当者らは有機物を分解して水素を発生する微生物機能に着目し、水素醗酵系を持つ通性嫌気性菌を材料に遺伝子操作による代謝系の改良、すなわちメタボリックエンジニアリング的手法による水素産生機能向上をめざした一連の研究を進めてきた。ここでは、1水素発生の最終段階において水素の酸化還元にはたらく酵素ヒドロゲナーゼの発現を強化した変異株を用いた水素発生系の律速段階の倹討、ならびに2代謝経路上、ギ酸からの分岐点で水素発生系と競合関係にある硝酸還元系遺伝子への変異導入による、硝酸存在下における水素発生機能の環境適応性の制御、以上2つのポイントについてこれまでに行った研究成果の要点を記した。
成果の内容・特徴
  1. 大腸菌でギ酸からの水素発生過程にはたらくヒドロゲナーゼの発現量が増加したhycA変異株についでギ酸ならびにグルコースを基質としたときの水素発生量を調べた結果、hycA変異株ではギ酸を基質とした場合に水素発生量の増加が認められた。従ってギ酸から水素に至る過程においてはヒドロゲナーゼの発現量が律速となっているものと考えられた。一方、グルコースを基質とした場合の水素発生量は親株とhycA変異株との間に有意な差はみられなかった。この場合ギ酸の生成以前の過程が律速となっているものと考えられた。
  2. 硝酸還元系遺伝子にトランスポゾンTn10が挿入された変異株について、嫌気下硝酸ナトリウムを添加したときのグルコースを基質とした水素の発生量を調べた。親株のRK4353では硝酸塩を添加すると水素の発生が抑制される。これはエネルギー効率の良い硝酸還元系によってギ酸が優先的に消費されてしまうためである。これに対して硝酸還元酵素のサブユニットの1つをコードする遺伝子narGにTn10が挿入された株RK5265では硝酸塩40mM存在下においても水素発生がみられた。これは、将来様々な成分の含まれる廃棄物から水素を生産するための微生物機能の改良、この場合環境適応性の拡大というアプローチに関する一つの方法例を示している。
    (表1)
    (表2)
成果の活用面・留意点
  1. 水素代謝系の機能発現に関係する遺伝子が近年多数発見されてきているが、各遺伝子の役割に関しては不明な点が多く残されており、遺伝子操作による機能改良のためには各遺伝子の役割解明に関する基礎的研究を進める必要がある。
  2. 遺伝子工学的手法による機能改良の方法論としては有用遺伝子の導入・発現による機能付加ばかりでなく、本事例のような、利用する側にとって都合の悪い機能をコントロールするという(変異を入れるという点では古くて新しい)視点が有効な場含もある。
具体的データ
(表1)
(表2)
予算区分経常(平成6年度 短期重点課題微生物における水素産生系遺伝子の発現制御機構の解析と環境再生型水素生産技術への応用)
研究期間1995~1999
発表論文大腸菌嫌気代謝系メタボリックエンジニアリングによる水素生産能の向上 平成7年度本生物工学会大会講演要集 p79
発行年度1995
収録データベース研究成果情報

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