多核種多次元NMR法によるHIVプロテアーゼ阻害剤の作用機構の解明

多核種多次元NMR法によるHIVプロテアーゼ阻害剤の作用機構の解明

タイトル多核種多次元NMR法によるHIVプロテアーゼ阻害剤の作用機構の解明
要約HIVの成熟に必要なHIVプロテアーゼに対して高活性高選択性を有する阻害剤を開発するため、多核種多次元NMR法によりHIVプロテアーゼと種々の阻害剤との複合体の溶液構造を原子レベルの分解能で解析し、分子認識機構と各種阻害剤の作用機構を解明した。
担当機関農業生物資源研究所 生物工学部 染色体操作研究室
連絡先0298-38-8399
区分(部会名)生物資源
専門バイテク
研究対象生物一般
分類研究
背景・ねらいエイズの病因ウイルスであるHIVの増殖には成熟型のgagタンパク質とpolタン
パク質が必要である。これらのタンパク質はポリタンパク質とした発現され
た後、pol遺伝子の産物であるHIVプロテアーゼによって切断されて、はじめ
てそれぞれの機能を発揮するようになる。HIVプロテアーゼ阻害剤はこのポリ
タンパク質の切断を阻害し、ウイルス粒子の成熟を抑制する。このため、HIV
プロテアーゼ阻害剤は現在もっとも期待される抗HIV薬剤の1つであり、活発
な開発競争が世界各地で繰り広げられている。 本研究では、多核種多次元N
MR法により15N/13Cで標識したHIVプロテアーゼと非対称性ペプチド様阻害剤
KNI272(Ki~5 pM)および対称性環状ウレア型阻害剤DMP323(Ki~270pM)の2種
の複合体の溶液構造を原子レベルの分解能で解析し分子認識機構を解明すると
ともに、KNI272とDMP323の阻害活性の発現機構を構造生物学的見地から解明す
る。
成果の内容・特徴
  1. アミノ酸99残基のポリペプチド鎖2本からなるHIVプロテアーゼホモダイマーは、対称性阻害剤DMP323と複合体を形成した際にも対称性を保持していた。これに対して、プロテアーゼホモダイマーは非対称性阻害剤KNI272と複合体を形成することにより本来の対称性を消失し、2つのプロテアーゼモノマーは各々独立のNMRスペクトルを示す。これは非対称性阻害剤との複合体形成に際して2つのプロテアーゼモノマーが各々固有の役割を担っていることを意味している(図1)。
  2. Asp側鎖カルボキシル炭素の化学シフトのpD依存性と同炭素の化学シフトに対するH/D同位体シフトを測定して、Asp側鎖カルボキシル基のイオン化状態を決定した。この結果をもとに、プロテアーゼ/DMP323複合体において、プロテアーゼの触媒基Asp25(モノマー1)とAsp125(モノマー2)側鎖カルボキシル基はともにプロトン化されていることを、他方、プロテアーゼ/KNI272複合体では、触媒基Asp25側鎖はプロトン化されているのに対して、Asp125側鎖はイオン化されていることを明らかにした。
  3. 以上の結果をもとにKNI272とDMP323の阻害活性の発現機構に相違があることを明確にした。KNI272はプロテアーゼの活性種であるAsp25(COOH)/Asp125(COO-) & Asp25(COO-)/Asp125(COOH)と複合体を形成し、直接にプロテアーゼ活性を阻害する。これに対して、DMP323は不活性種であるAsp25(COOH)/Asp125(COOH)と複合体を形成しフリープロテアーゼの平衡から除外し、その結果、活性種の総量を低下させることにより、プロテアーゼ活性を阻害する(図1)。
成果の活用面・留意点本研究で得られた結果は、HIVプロテアーゼの触媒基Asp25/Asp125側鎖のイオン化
状態が阻害剤との特異的相互作用に依存すること、さらには、阻害剤のタイプに
より阻害活性の発現機構が異なることを示している。これらの結果は、高活性高
選択性プロテアーゼ阻害剤の新規開発に新たな方向性を提示している。
具体的データ
図1
予算区分科・省際基礎[超分子]
研究期間1996~1997
発表論文4.Y.-X. Wang, D. I. Freedberg, T. Yamazaki et al. Biochemistry 35,
9945-9950 (1996).
5.T. Yamazaki et al. 第34回ペプチド化学討論会 1996.
3.T. Yamazaki et al. Protein Science 5, 495-506 (1996).
1.T. Yamazaki et al. J. Am. Chem. Soc. 116, 10791-10792 (1994).
2.L. K. Nicholson, T. Yamazaki et al. Nature, Struct. Biol. 2, 274-280 (1995).
6.D. I. Freedberg, Y.-X. Wang, T. Yamazaki et al. XVIIth InternationalConference on Magnetic Resonance in Biological Systems 1996.
7.Y.-X. Wang, D. I. Freedberg, T. Yamazaki et al. XVIIth InternationalConference on Magnetic Resonance in Biological Systems 1996.
8.D. I. Freedberg, Y.-X. Wang, T. Yamazaki et al. 37th Experimental Nuclear Magnetic Resonance Conference 1996.
発行年度1996
収録データベース研究成果情報

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