アミノ末端に任意のアミノ酸をもつタンパク質の試験管内合成法

アミノ末端に任意のアミノ酸をもつタンパク質の試験管内合成法

タイトルアミノ末端に任意のアミノ酸をもつタンパク質の試験管内合成法
要約 アミノ末端にメチオニン以外のアミノ酸をもつタンパク質の合成開始はこれまで自然界の翻訳反応系では不可能であった。昆虫ウイルス由来のRNA配列の直下にコード配列を連結することにより、任意のアミノ酸からのタンパク質合成開始が可能となった。
キーワード翻訳開始、リボソーム内部進入部位(IRES)、タンパク質合成
担当機関(独)農業生物資源研究所 昆虫適応遺伝研究グループ 昆虫共生媒介機構研究チーム
連絡先029-838-6166
区分(部会名)生物資源
分類技術開発、知的貢献
背景・ねらい生物がもつ翻訳装置(リボソーム、tRNA、開始・伸長・終結因子類等)を使用したタンパク質の合成開始反応には、開始メチオニンtRNAという特殊なtRNAが必要である。したがって,自然界の細胞抽出液を利用した試験管内タンパク質合成法においては、これまでメチオニン以外のアミノ酸をアミノ末端にもつタンパク質の合成はできなかった。無脊椎動物に感染するジシストロウイルス科のウイルスはそのRNAゲノム内に開始メチオニンtRNAを使用せずに翻訳開始を行わせるRNA高次構造を形成する核酸配列をもつ。このRNA高次構造を利用することにより、任意のアミノ酸からの試験管内タンパク質合成開始を可能にし、生体内では前駆体タンパク質の切断によって初めてその機能を発揮するようなタンパク質の試験管内直接合成を可能にすることをめざす。
成果の内容・特徴
  1. チャバネアオカメムシ腸管ウイルス(Plautia stali intestine virus, PSIV)がもつリボソーム内部進入部位(internal ribosome entry site, IRES)の二次構造と試験管内翻訳実験に使用したプラスミドの構造(図1)。
  2. 図1のプラスミドの翻訳第1コドン(野生型ウイルスではCAA)を20種類のアミノ酸をコードするコドンに変異させ、各RNAの翻訳実験を行ったところ、いずれのコドンからもタンパク質の合成が可能であった(図2)。これらの中で第1コドンをCGU(レーン番号3)とAAA(レーン番号12)にしたものについては合成産物のアミノ酸配列解析により、アミノ末端がアルギニンとリシンになっていることを確認した。
  3. 外被タンパク質コード領域をAUG開始コドンを欠くホタルルシフェラーゼやウミシイタケルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質遺伝子に置き換えた場合にも翻訳産物が確認されたことから、このIRESを使用することにより、任意のアミノ酸からの試験管内タンパク質合成開始が可能と判明した(図3、図4)。

図1

図2

図3

図4
成果の活用面・留意点
  1. IRES直下に異種遺伝子コード領域をもつプラスミドを構築する際、制限酵素認識配列が転写後に高次構造を形成する傾向にある。異種遺伝子のコード配列をPCRで増幅後にリン酸化し、制限酵素を使用せずにプラスミドを構築する方が望ましい。
  2. このIRESによる翻訳開始反応は真核生物のリボソームにおいてのみ可能で、原核生物由来のリボソームはこのIRESを認識しない。
  3. IRES依存性の翻訳効率は翻訳開始点付近のRNA高次構造に影響される。異種遺伝子の翻訳効率が悪い場合にはコード領域のGC含量を低下させる変異(silent mutation)を導入すると改善する傾向にある。
具体的データ
図表
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予算区分外資・生研基礎
研究期間2001~2005
研究担当者金森保志、渋谷典広、西山孝、斉藤準、中島信彦
発表論文2)Shibuya N, Nishiyama T, Kanamori Y, Saito H, Nakashima N.
(2003)Conditional rather than absolute requirements of the capsid coding sequence for initiation of methionine-independent translation in Plautia stali intestine virus. Journal of Virology 77 : 12002-12010.
特許出願(公開)1)中島信彦・金森保志(2001)新規な翻訳活性促進高次構造 特願2001-61746
発行年度2003
収録データベース研究成果情報

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