昆虫の咀爵運動に関わる大顎閉筋運動ニューロン群の機能分化

昆虫の咀爵運動に関わる大顎閉筋運動ニューロン群の機能分化

タイトル昆虫の咀爵運動に関わる大顎閉筋運動ニューロン群の機能分化
要約カイコの咀嚼運動を司る大顎閉筋は、食道下神経節に細胞体を持つ11対の運動ニューロンに支配される。これらの運動ニューロンは、細胞内記録で得られるスパイク応答の特性やそれらが支配する筋繊維の種類等から、二つのタイプに分けられ、大顎の動きの制御に異なる役割を持つと考えられる。農業生物資源研究所・生体機能研究グループ・昆虫神経生理研究チーム
キーワード昆虫、咀嚼、大顎閉筋、運動ニューロン、細胞内電位、筋電位
担当機関(独)農業生物資源研究所 生体機能研究グループ 昆虫神経生理研究チーム
連絡先029-838-6106
区分(部会名)生物資源
分類知的貢献
背景・ねらい昆虫の咀嚼運動は、大顎を開閉する筋肉によって司られている。大顎筋は、羽や脚を動かす筋肉と同様に多数の運動ニューロンに支配されているが、多数のニューロンが必要な理由はよく分かっていない。本研究では、昆虫の摂食行動制御に関わる基盤研究の一環として、カイコ幼虫を材料に用いて大顎閉筋を支配する運動ニューロン群の形態観察と細胞内電位記録、及び大顎閉筋の筋電位記録等を行い、複数ある大顎閉筋運動ニューロンの個々の生理学的性質と咀嚼運動の制御における役割を明らかにしようとした。
成果の内容・特徴
  1. カイコの大顎閉筋につながる神経をコバルト-リジン溶液で染色することにより、大顎閉筋運動ニューロンは食道下神経節に11対あることがわかった(図1)。この運動ニューロンの細胞体は直径30μm前後と大きく、ガラス微小電極による細胞内記録が比較的容易に行える。
  2. 運動ニューロンの細胞体に刺入したガラス電極から刺激電流を与えてスパイク応答を記録すると同時に、銀線電極により大顎閉筋から細胞外の筋電位活動を記録することにより、運動ニューロンのスパイクと同期して発生する筋電位の大きさと観察される大顎の動きから、大きな筋電位で早い動きを生じる速筋繊維と小さな筋電位で遅い動きを生じる遅筋繊維を判別することができた。
  3. 運動ニューロンは、筋繊維との対応により、相対的に高い刺激電流値で低い頻度のスパイク応答が発生し、速筋繊維を支配するFastタイプと、低い電流値で高い頻度のスパイク応答が発生し、遅筋繊維を支配するSlowタイプの2つに分けられた(図2A, B)。この発見は、昆虫の大顎閉筋運動ニューロン群が機能的に分化していることを細胞レベルで証明した初めての例である。
  4. 大顎を閉じたまま動かないように固定した状態では、Fastタイプの運動ニューロンの活動は見られず、Slowタイプの運動ニューロンと遅筋繊維のみが活動し、固定をはずすとそれらの活動は消失した。Fastタイプニューロンは、餌を噛み砕くための早くて大きな動きを必要とする時に活動し、Slowタイプニューロンは、大顎の微妙な位置の調製が必要な遅い動きの際に活動するものと考えられる。

図1

図2A

図2B
成果の活用面・留意点
  1. 今後は、咀嚼の後に続く飲み込み運動についても運動に関わる神経や筋肉の特性を調べ、昆虫の摂食行動の基本的な神経機構を明らかにする。
  2. さらに、咀嚼や飲み込みの運動パターンを形成する神経中枢がどこにどのような形で存在し、味物質などのパターンを修飾する情報の入力がどこでどのように行われているのかなどを明らかにする。
具体的データ
図表
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予算区分生研基礎
研究期間2001~2005
研究担当者佐々木謙、朝岡潔
発表論文Sasaki K, Asaoka K,(2005)Different physiological properties in a pool of mandibular closer motor neurons in a caterpillar, Bombyx mori. Neurosci. lett. 374 : 166-170.
発行年度2004
収録データベース研究成果情報

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