イネのキチンオリゴ糖エリシター受容体遺伝子の同定

イネのキチンオリゴ糖エリシター受容体遺伝子の同定

タイトルイネのキチンオリゴ糖エリシター受容体遺伝子の同定
要約植物病原糸状菌細胞壁成分であるキチンの断片はごく微量でも植物に強い生体防御応答を誘導する。その受容・認識に関わるタンパク質をイネ細胞膜から精製し、遺伝子の構造を明らかにした。この遺伝子はイネゲノム中に1コピーのみ存在した。
キーワードイネ、エリシター、キチンオリゴ糖、受容体、生体防御応答
担当機関(独)農業生物資源研究所 植物科学研究領域 植物
連絡先029-838-7910
区分(部会名)生物資源
分類知的貢献
背景・ねらい高等植物は病原微生物の感染を鋭敏に認識し生体防御応答を展開して身を守る。この感染のシグナルとなる物質はエリシターと呼ばれ、特に病原糸状菌の細胞壁多糖の加水分解物が強力なエリシターとして働くことが知られている。その中でもキチンの断片(キチンオリゴ糖)は低濃度で強力な作用を持つ。このようなエリシターの受容機構の解明は植物の病害抵抗性機構の理解のみならず、それを増強することによる抵抗性作物育種への道を開くものとして重要である。本研究では、ほとんど実体のわかっていないエリシター受容体の分子構造を明らかにすることを目的とした。
成果の内容・特徴
  1. 高純度のイネ原形質膜を出発材料とし、界面活性剤処理による可溶化、アフィニティカラムクロマトグラフィーによって、キチンオリゴ糖に親和性の高い原形質膜タンパク質(CEBiP; Chitin Elicitor-Binding Protein)を高度に精製した。このタンパク質は電気泳動で測定した分子量が75kDaであった。
  2. このタンパク質を電気泳動のゲルから抽出し、N末端のアミノ酸配列を解読した。それをもとに作製したプライマーでPCRを行い、アミノ酸配列が完全に一致するタンパク質をコードするcDNAを単離した。この塩基配列から推定されるアミノ酸配列中には、別途解読した3カ所の内部アミノ酸配列と完全に一致する配列が含まれていたことから、このcDNAがCEBiPをコードするものと結論した。
  3. このcDNAは328アミノ酸からなる分子量約35kDaのタンパク質をコードしており、精製タンパク質の見かけの分子量(75kDa)との差は糖鎖修飾によるものであると考えられた。また、キチン結合モチーフの一つであるLysMドメインを2カ所持ち、C末端側に膜貫通領域を持っていたが(図1)、細胞質ドメインと思われる構造は見出されなかった。
  4. このタンパク質の発現をRNAi法によって抑制したイネ細胞は、リポ多糖エリシター処理による過酸化水素生成が正常であったのに対し、キチンオリゴ糖エリシター処理ではそれが有意に抑制された(図2)。またエリシターに応答して発現が変化する遺伝子の種類が顕著に減少した(図3)。これらの結果からCEBiPはキチンオリゴ糖エリシターのシグナルを特異的に受容し、生体防御応答を誘導する機能を持つことが明らかとなった(図4)。
  5. CEBiPのmRNA量はキチンオリゴ糖処理により増加したことから、イネはエリシターシグナルを受容すると、受容体タンパク質(センサー)量を増加させることによってシグナルをより鋭敏に認識するメカニズムを持っていることが強く示唆された。
成果の活用面・留意点エリシターは幅広い病原菌に対する抵抗性を付与することが知られている。CEBiPの発見は、病原菌の種類を問わず広範囲な病害抵抗性を付与する新たな戦略を樹立するための基礎的知見となる。
具体的データ
図表
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予算区分生研基礎、重要形質
研究期間1996~2007
研究担当者賀来華江(現明治大学)、渋谷直人(現明治大学)、西澤洋子、秋本千春、南 栄一
発表論文Kaku H, Nishizawa Y, Ishii-Minami N, Akimoto-Tomiyama C, Dohmae N, Takio K, Minami E, Shibuya N(2006)Plant cells recognize chitin fragments for defense signaling through a plasma membrane receptor. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103: 11086-11091.
発行年度2006
収録データベース研究成果情報

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