脱皮ホルモン生合成を抑制するカイコ新規神経ペプチド

脱皮ホルモン生合成を抑制するカイコ新規神経ペプチド

タイトル脱皮ホルモン生合成を抑制するカイコ新規神経ペプチド
要約前胸腺の脱皮ホルモン生合成活性を抑制する新規神経ペプチドをカイコ幼虫脳から単離した。このペプチドは9個のアミノ酸からなり、単独で前胸腺の脱皮ホルモン生合成活性を抑制するばかりでなく、前胸腺刺激ホルモンによる前胸腺の活性化を阻害し、脱皮ホルモン生合成調節に深く関与している。
担当機関蚕糸・昆虫農業技術研究所 生体情報部 生理活性研究室
連絡先0298-38-6152
区分(部会名)蚕糸・昆虫機能
専門昆虫機能
研究対象昆虫類
分類研究
背景・ねらい節足動物では前胸腺から分泌される脱皮ホルモン(エクジステロイド)によって脱皮・変態が誘起されるが、その合成・分泌は昆虫では促進因子である前胸腺刺激ホルモン(PTTH)によって制御されると一般に考えられている。しかしながら、カイコなど数種の昆虫で抑制因子が関与する可能性も示唆されている。そこで、カイコ幼虫脳から前胸腺におけるエクジステロイド生合成抑制活性をもつ新規因子を単離し、PTTHとの相互作用の解明を試みた。
成果の内容・特徴
  1. 前胸腺の器官培養とラジオイムノアッセイを組み合わせた前胸腺抑制活性検定方法を用いて、2,000頭分の5齢幼虫脳を出発材料として精製を進め逆相液体クロマトグラフィーなど6段階のステップを経て前胸腺抑制因子の単離に成功した。この因子は9個のアミノ酸からなる分子量が1,090のペプチドであり、前胸腺抑制ペプチド(Prothoracicostatic peptide; PTSP)と名付けられた。
  2. PTSPは甲殻類の脱皮抑制ホルモンとは全く異なる構造であったが、タバコスズメガで既に単離されている筋収縮抑制ペプチド(Mas-MIP-I)と全く同じ構造であり、また、フタホシコオロギから単離されたアラトスタチン(Grb-AST B1)や脊椎動物のガラニンとも高い相同性を有していた(図1)。
  3. PTSPは単独でエクジステロイド生合成活性が高い吐糸期の前胸腺を強く抑制した。また、終齢幼虫の摂食期の前胸腺にPTSPとPTTHを同時に投与すると、PTTHによるエクジステロイド合成の活性化が阻害された(図2)。したがって、PTSPは吐糸期や眠期の後半において前胸腺の活性を抑制することでエクジステロイド濃度を低下させるか、吐糸期や眠期の直前においてPTTHの作用を阻害することでエクジステロイド濃度上昇のタイミングを調節している可能性が示唆された。
成果の活用面・留意点本成果は、昆虫の脱皮ホルモン合成・分泌が促進因子と抑制因子の二重支配を受けている可能性を示唆したものであり、昆虫の内分泌制御機構に新たな知見を加える。
具体的データ
(図1)
(図2)
予算区分COE
研究期間1999~2000
発表論文Identification of a prothoracicostatic peptide(PTSP)from the larval brain of the silkworm,Bombyx mori.J.Biol.Chem.274,p.31169-31173,1999
発行年度1999
収録データベース研究成果情報

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