「小さな生業」の民俗調査情報を活用した地域振興インセンティブ向上手法

「小さな生業」の民俗調査情報を活用した地域振興インセンティブ向上手法

タイトル「小さな生業」の民俗調査情報を活用した地域振興インセンティブ向上手法
要約 「小さな生業」に関する民俗調査は地域住民にとって、農村を肯定的に捉え直す契機となる。郷土史誌類等の民俗調査情報を、「問いかけ」「ヒント」「答え」に整理し、対話方式のワークショップを行えば、地域振興への住民インセンティブの向上を効率的に行える。
キーワード民俗調査情報、地域振興、文化的地域資源、郷土史誌類
担当機関(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 農村総合研究部 都市農村交流研究チーム
連絡先029-838-7559
区分(部会名)農業工学
区分(部会名)農村工学
分類技術、行政、普及
背景・ねらい 文化的地域資源は地域振興のための重要な資源であるが、特定の民俗芸能や食文化がイベントの出し物として利用されているに過ぎない。農村伝承文化は、本来多種多様な事象によって構成され、農村環境管理や住民組織化等、日常的な活動にも有意に機能する。そうした文化的資源を適切に掘り起こし、地域振興のあらゆる場面で活用する必要がある。民俗学的聞き取り調査は地域住民と調査者との間にコミュニケーショナルな共有認識を構築する。それが住民自身に農村文化を自らの記憶・体験として認識させ、地域の維持・継承(伝承)に向けてのインセンティブを醸成させ、多方面での自律的活動を促すが、そうした調査を行うには専門的訓練と多大な労力・時間が必要となる。本研究では現地実践によって得られた知見をもとに、どの農村地域にもある文化事象と、入手しやすいツールを用い、文化資源活用による地域振興への住民インセンティブ向上手法を提示する。
成果の内容・特徴
  1. 稲作や畑作の主生業の合間に行われる「小さな生業」(農間余業・遊び仕事・遊び)に対する聞き取り調査は、地域住民の農村での暮らしに対する肯定的理解につながり、地域振興にむけての住民インセンティブを醸成する(図1a)。島根県大田市大代町・同県美郷町奥山地区・新潟県十日町市松代では、民俗学的聞き取り調査の実施により、農村環境管理や、伝統行事再生、都市との交流など多様な活動を自律的に始めている。
  2. 多くの地域で民俗調査は既に実施され「郷土史誌」「民俗誌」「緊急民俗調査報告」等にまとめられている。その「生業」「子供の遊び」に相当する項目には「小さな生業」に関する情報が豊富に記載され、地域振興のための有用な民俗調査情報となる可能性がある。(図1b)
  3. 民俗調査は概ね「問いかけ」と「答え」の連続により、調査者と農村生活者との認識をすりあわせ、理解(認識共有)していく。二回目以降の「問いかけ」は、調査者が認識したイメージを生活者に提示し、より正確な記憶の喚起を促す。このプロセスに沿い、郷土史誌類の情報を「問いかけ」「ヒント」「答え」に整理し、プレゼンソフトを用いて、ワークショップ等を実践すれば、多数の住民との対話・理解が進み、文化資源情報が短時間で得られ、住民インセンティブも向上する(図1c)。岩手県岩泉町でこの手法を行ったところ、多くの住民が自らの体験を伝えようと積極的に発言し、「遊び」を再現しようとする意欲が見られた。
成果の活用面・留意点
  1. 本成果は特に高齢化の進む中山間地域農村の地域振興や農村環境管理を課題とする主体(若年リーダー・普及員・市町村職員等々)の活用により効果が期待できる。
  2. 本成果は実践事例に関する啓蒙記事や、民俗調査の手引きとしてまとめ、関係団体とともに普及につとめている。
  3. 本手法は農村文化を住民の体験の中から掘り起こすための最初の段階を効率化したものであり、振興活動の推進には継続的な住民とのコミュニケーションが必要とされる。
具体的データ
図1 郷土史誌類の民俗調査情報とプレゼンソフトを活用したワークショップWSの手順例
予算区分交付金プロ(資源保全)
研究期間2006~2007
研究担当者山下裕作
発表論文1)山下裕作(2006)水土文化への誘い-水土文化の集め方、聞き方-、農土誌、74(9):49-54
2)山下裕作(2006)「遊び仕事」の記憶と農村伝承-「過疎高齢化」という「錯覚」を超えるもの-,2006年現代農業8月増刊:148-157
3)山下裕作(2008)遊び仕事の伝承と地域の未来、07フォーラム膝詰め談義伝え承ける岩泉の暮らしと文化、岩手大学寒冷フィールドサイエンス教育研究センター:33-42
発行年度2007
収録データベース研究成果情報

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