稲作上層農家の土地問題

稲作上層農家の土地問題

タイトル稲作上層農家の土地問題
要約 10ha前後の稲作上層農家の形成過程と展開条件及びそれに関わる農地問題を統計分析と松任市の実態調査によって,ことに地代負担力と小作料水準の問題,土地利用調整問題を解明した。
担当機関農業総合研究所 農業構造部長
連絡先03-3910-3946
区分(部会名)農業経済
区分(部会名)農林水産政策
専門経済構造
分類行政
背景・ねらい農地の流動化の進展は,購入・借入側からみれば基本的には各地域の中核農家がいかに形
成され,その展開条件がどうであるかにかかっており,その農業内部の条件としては地価
・地代水準,農業所得の形成力と地代支払能力が,また,耕地基盤の整備状況等が重要で
あり,他方では地元での労賃・労働市場条件等が自からの所得形成力との比較において,
あるいは農地の出し手,委託者の勤労者としての経済的自立との関係で重要である。そこ
で,稲作上層農家の形成過程と展開条件,それに関わる農地問題を実態的に明らかにする
ために,耕地5ha以上経営の増大が著しい北陸地域松任市の事例によって検討した。
成果の内容・特徴
  1. 稲作上層農の形成及び地代負担力などの受託者側の条件について,1990年センサス及び米
    生産費調査結果等を利用して全国的動向を分析した。近年の生産者米価の控え置き,引き
    下げは,稲作経営全体の収益性を著しく悪化させており,5ha以上作付階層といえども純
    収益・地代負担能力を低下させてきている。と同時に,下層の稲作経営赤字幅の拡大が生
    じており,収益性の階層間格差は拡大してきている。これは一面では上層農にとって所得
    確保のためにも規模拡大の必要性を強めることになり,また,下層に対しては採算悪化の
    下で離農を促進することになり,ともかく農地流動化への一つのインパクトとなっている。

  2. しかしながら,この米作経済の悪化は,構造的過剰下の米作転作の強化,さらには最近の
    アメリカの米市場の開放要求と重なり,根強い米作不安を呼びおこし,最上層農すら経営
    基盤の動揺がみられ,農業継続の不安に直面するような事態となっている。したがって,
    今後の展開方向の見通しは,これらの実態の正確な把握の上でなされねばならない。
  3. 石川県松任市の10ha前後の大規模稲作経営の形成,展開条件と農地流動化に関わる問題に
    ついて検討し,所得形成力と地代負担力,小作料問題等の担い手の形成と継承に関わる諸
    課題を明らかにした。そして借地型拡大が主流となっている規模拡大過程において,一方
    における収益性の低下の中での地代負担力と下方硬直的な小作料水準の問題が経済的問題
    として特に重要になってきていると考えられる。
  4. 農地の流動化と農地の有効利用にとって現場で問題となっている個別借地型展開と生産組
    織化方式との競合等の土地利用集積と利用調整問題について検討を加えた(表1)。 
成果の活用面・留意点借地型大規模農家の形成にとって問題となっているのは,高地価,高地代,耕地分散と通
作の遠距離化,米価の低下と所得の伸び悩み・低下,基盤整備の未実施田と整備後の負担
金問題などであるが,小作料水準が旧来の水準に固定的になりがちであるので行政機関の
適性化に向けた積極的取り組みが望まれる。また,耕地規模拡大は多額の機械施設投資を
必要とし,先行的投資の際の負債問題にも注意を要する。
具体的データ
(表1)
予算区分特別研究(農地政策)
研究期間1990~1992
発表論文地域農業の担い手と農地流動化,島本富夫・田畑 保編『転換期における土地問題と農地政策』農業総合研究所研究叢書第113号,1992
発行年度1992
収録データベース研究成果情報

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